電動キックボードの保険はどうすればいいの?

水谷 力
2023.03.23

法改正で免許が不要に
 最近、電動キックボードは、小回りが利き、騒音や排気ガスもなく便利な乗り物として利用されています。利用するためには、2023年6月までは原付免許証以上を携帯する必要がありますが、道路交通法の改正により、最高時速20㎞以下などの所定の基準を満たした電動キックボードについては、16歳以上であれば運転免許なしでも乗れるようになります(2023年7月1日施行)。さらに、この基準を満たしている場合は、ヘルメットをかぶることも必須ではなく努力義務となります。

 今回の改正によって、たとえば、高齢者の運転免許返納後の移動手段としての利用や、運転免許を持っていない学生の通学利用などへの活用も考えられるなど、利用の幅が広がることも考えられます。

 その一方で、2023年6月までは免許証が必須であるため、利用者は交通ルールをしっかり理解して順守する意識を持った人が多く、他人の迷惑とならない運転を心掛ける傾向が強いと思います。ところが、免許証がいらなくなると、交通ルールをしっかり理解しないまま運転してしまい、自動車や二輪車、歩行者など、本人のみならず他人を危険に巻き込むおそれも考えられます。実際、キックボードは遊具というイメージが強いせいか、軽い気持ちで電動キックボードに乗っている人もいるのではないでしょうか。

 もし、キックボードで事故が発生したらどうなってしまうのでしょうか。
事故への必須の備え
 近年、自転車事故で、加害者となった運転者側に対し1億円近い賠償責任が問われる判決も出ています。電動キックボードでも、重大な事故を起こせば巨額の賠償責任を負うことになりかねません。

 現状では電動キックボードは自賠責保険への加入が必須となっていますが、改正後も同様です。電動キックボードに乗るなら自賠責保険への加入は必須です。

 自賠責保険は交通事故による被害者を救済するために法律で加入を義務付けられた、いわゆる強制保険です。補償内容は被害者死亡時が最高3000万円、後遺障害時は最高4000万円です。上記の自転車事故でのケースを考えると、金額的には最低限と言ってもよいレベルのものです。自賠責保険では補償しきれない巨額な賠償もあり得ますので、それに備えて任意保険にも加入しておくことをお勧めします。

 また、保険に加入する際に注意したいことがあります。それは、自転車保険や個人賠償責任保険に加入していれば十分と考える人もいるかもしれませんが、電動キックボードは対象外であることです。電動キックボードに乗るなら、今のところ、原動機付自転車用の保険(原付の保険)か、自動車保険にファミリーバイク特約を付帯することが必要になります。

 ヘルメットを着用し、任意保険にも加入するなど、安全面や万一の場合の補償にも配慮しながら電動キックボードを利用したいものです。
【参考情報】
生命保険の募集人の方は、上記のような損害保険の話から生命保険の話につなげることも可能です(詳しくは以下の書籍が参考になります)。(今回のテーマと同一ではありませんが、自転車事故の賠償リスクからのアプローチトークも収録されています)
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水谷 力(みずたに・ちから)
株式会社セールス手帖社保険FPS研究所
社会保険労務士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
組織開発コンサルタント

大手保険会社在職中にFP資格やコーチング資格等を取得。現在は各種執筆活動などをおこなっている。著書には、「違いを生み出すファーストアプローチ」「違いを生み出す生損保リスクチェック」(いずれもセールス手帖社保険FPS研究所)がある。

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