家賃の支払いとインボイス制度

木下 洋子
2023.03.30

 事業者が月々の家賃を支払う方法としては、毎月定額を口座振替や振り込みで支払うケースが多いであろう。このように、契約書に基づき代金決済が行われ、取引の都度、請求書や領収書が交付されない取引であっても、仕入税額控除を受けるためには、原則として、インボイスの保存が必要となる。
口座振替・引き落としで支払われる家賃のインボイス
 インボイスは、一定期間の取引をまとめて交付することもできるので、相手方(貸主)から一定期間の賃借料についてのインボイスの交付を受け、それを保存することによる対応も可能である。なお、インボイスとして必要な記載事項は、一の書類だけで全てが記載されている必要はなく、複数の書類で記載事項を満たせば、それらの書類全体でインボイスの記載事項を満たすことになるので、契約書にインボイスとして必要な記載事項の一部が記載されており、実際に取引を行った事実を客観的に示す書類とともに保存しておけば、仕入税額控除の要件を満たすこととなる。

 よって、家賃に関しては、インボイスの記載事項の一部(例えば、取引年月日以外の事項)が記載された契約書とともに通帳(取引年月日を示すもの)を併せて保存することにより、仕入税額控除の要件を満たすこととなる。 また、口座振込により家賃を支払う場合も、インボイスの記載事項の一部が記載された契約書とともに、銀行が発行した振込金受取書を保存することにより、請求書等の保存があるものとして、仕入税額控除の要件を満たすこととなる。
インボイス開始前からの契約について
 インボイス開始前の令和5年9月30日以前の契約について、契約書に登録番号等の適格請求書として必要な事項の記載が不足している場合には、別途、登録番号等の記載が不足していた事項の通知を受け、契約書とともに保存していれば差し支えがない。必ずしも、新たに契約書を作成し直す必要はない。
インボイス取得後も注意が必要
 このように取引の都度、請求書等が交付されない取引について、取引の中途で取引の相手方(貸主)が適格請求書発行事業者でなくなる場合も想定され、その旨の連絡がない場合には借主はその事実を把握することは困難となる。貸主が適格請求書発行事業者でなくなった場合は、支払った家賃について、原則として、仕入税額控除を行うことはできなくなる。そのため、必要に応じ、「国税庁適格請求書発行事業者公表サイト」で相手方が適格請求書発行事業者か否かを確認する必要がある。適格請求書発行事業者の登録が取り消された場合又は効力を失った場合、登録取消または失効年月日が「国税庁適格請求書発行事業者公表サイト」において公表される。

 契約書に基づき代金決済が行われ、取引の都度、請求書や領収書が交付されない支払のケースとしては、家賃の他に、税理士や弁護士などの顧問料も考えられる。

 インボイス制度の開始前に、インボイスの記載事項をどのように満たすのか、取引ごとの検証が必要である。
参照:
木下 洋子(きのした・ひろこ)
マネーコンシェルジュ税理士法人

群馬県出身。大学卒業後、会計事務所勤務を経て現法人へ。法人成り支援や節税対策・赤字対策など、中小企業経営者の参謀役を目指し、活動中。年に数回の小冊子発行など、事務所全体で執筆活動にも力を入れている。趣味はピアノを弾くこと。

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