36協定の締結当事者の要件を確認しておこう

庄司 英尚
2023.05.15

選出が適正に行われていないものは無効に
 時間外労働・休日労働に関する協定(36協定)締結の際には、使用者(会社)はその都度、当該事業場に労働者の過半数で組織する労働組合(過半数組合)がある場合はその労働組合、過半数組合がない場合は労働者の過半数を代表する者(過半数代表者)と、書面による協定をしなければならない。

 過半数代表者の選出が適正に行われていない事業場が36協定を締結し、労働基準監督署に届け出たとしてもそれは無効であるため、労働者に法定外の時間外・休日労働を行わせることはできない。後になってトラブルになる可能性が高いため、今回は36協定の締結当事者の要件についてまとめることとする。
パート、アルバイトを含めた労働者の過半数
 過半数組合は労働者の過半数の組合員で組織された組合であること、過半数代表者は労働者の過半数の代表であることが要件となっているが、ここでいう労働者とは、正社員だけでなく、パートやアルバイトなども含めた事業場のすべての労働者が対象であり、その過半数が必要であることは注意したい。

 過半数代表者は、労働基準法第41条第2号に規定する管理監督者でないことという大事な要件もある。管理監督者とは単に管理職全般を指すのではなく、一般的には部長、工場長など労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある人のことを指す。過半数代表者を選出するに当たっては、管理監督者に該当する可能性がある人は避けたほうがよいといえる。
投票、挙手など民主的な手続で
 過半数代表者を選出する際は、すべての労働者が参加したうえで、労働者の過半数がその人の選出を支持していることが明確になる民主的な手続き(投票、挙手、労働者による話し合いなど)がとられていなければならない。過半数代表者を会社代表者が指名した場合や社員親睦会の幹事などを自動的に選任した場合は、その代表者が締結した協定は無効になってしまうので注意したい。

 最後に、労働基準監督署に届け出た36協定は労働者に周知しなければならず、これを軽視して周知しなかった場合、労働基準法第106条違反(30万円以下の罰金)となることも押さえておきたい。会社は、過半数代表者を選出する際は1つ1つステップを踏んで丁寧に進めることで従業員との信頼関係も維持することができる。これを機会に自社の状況についても過半数代表者の選出が適正に行われているか確認しておくとよいだろう。
参照:
庄司 英尚(しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所(現・アイウェーブ社労士事務所)を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/

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