3人に2人がリスキリングに取り組んでいる

庄司 英尚
2023.05.29

個人でリスキリングに取り組む人が増加
 岸田首相は昨年の衆院本会議で、個人のリスキリング(学び直し)の支援に5年で1兆円を投じると所信表明したこともあり、リスキリングはますます注目されるようになってきた。時代の変化が激しい中で、ビジネスパーソンはリスキリングに興味関心をもっており、企業側も今後に向けて動いていきたいところだ。

 転職サイトなどを運営するビズリーチは、2023年2月に同社の会員や企業の経営層・採用担当者を対象に、リスキリングに関する調査を行った。その調査結果によるとリスキリングに取り組むビジネスパーソンは、前回の調査(2021年10月実施)より12.8ポイント増加し、67.6%となった。

 その内訳は、「個人で取り組んでいる」が最も多く48.2%、「勤め先、個人の両方で取り組んでいる」が11.0%、「勤め先を通じて取り組んでいる」が8.4%となり、特に個人で取り組む人の割合が増加している。
リスキリングに取り組んでいる企業、26.3%
 経済産業省の資料によると、リスキリングについて「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」と定義しているが、リスキリングの実状はどちらかというと、企業側が主体となって自社の従業員の新たなスキル習得を促していくものであって、現在も企業側はDX化やデジタル化を推進するためのスキルを獲得してほしいと思っているようだ。

 同調査では、各企業に対しての質問で「現在リスキリングに取り組んでいる」と回答した企業は26.3%となった。企業規模でみると、従業員数5,000名以上の企業が48.9%と最も多く、50名未満の企業が12.2%となっており、企業規模に比例してリスキリングの実施率は高くなっている。
リスキリングの必要性、95%が感じている
 自身のスキルについて、将来的に新たなスキルを身につける必要があると感じるかという質問には、「とても思う」が54.1%、「どちらかといえばそう思う」が40.9%であわせると95.0%が必要性を感じていることが明らかになった。「とても思う」と答えた割合は、年代が若いほど高い傾向にあり、30代は70.7%を占めていた。

 将来的に新たなスキルを身につける必要があると思う理由については、「仕事の幅を広げるために、継続的にスキルアップしたいから(68.0%)」が最も多く、次いで「自身の希少性を向上させ、市場価値を上げたいから(55.2%)」という結果となった。また30代では他の世代に比べて、「中長期的にキャリアを考えると、現状のスキルだけだと不安を感じるから(61.2%)」が高い結果となっていた。

 この調査では、企業のリスキリングの取り組みにおいては、今後、新たなスキルを身につけた社員に対する活躍の機会の提供や創出が課題となってくると推測されるとコメントしており、企業側は今回の調査結果を素直に受け止めて早めに対策をとるべきであるといえるだろう。
参照:
庄司 英尚(しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所(現・アイウェーブ社労士事務所)を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/

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