異次元の少子化対策 ―こども子育て支援加速化プラン―

沖田 眞紀
2023.06.22

 2023年2月28日に発表された「人口動態統計速報(令和4年(2022)12月分)」によれば、2022年の出生数は79万9,728人(前年比5.1%減)と過去最少で80万人を下回りました。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、出生数が79万人台になるのは、33年とされていましたが、11年早く少子化が進んだことになります。

 2030年代に入ると、我が国の若年人口は現在の倍速で急減し、少子化は もはや歯止めの利かない状況になると予想されるため、これからの6~7年が、少子化傾向を反転できるかどうかのラストチャンス、2030年は少子化対策の分水嶺となります。

 政府は『異次元の少子化対策』を掲げ、2024年から3年間かけて『こども・子育て支援加速化プラン』を集中的に取り組むと発表しています。

 異次元の少子化対策には年間3兆円が必要で、政府は財源として社会保険料の上乗せなどを検討しています。自民党は、新しい特別会計『こども金庫』を創設して費用負担の見える化を進め、一元的に管理する方針であること、まずは歳出改革を徹底していく、としたうえで、「企業の賃上げや投資の拡大の妨げにならない、また、個人にとっても実質的に負担増にならない仕組みにしていきたいと考えている」としています。
こども・子育て政策 3つの基本理念
1.
若い世代の所得を増やす
例)
賃上げ、『106万円、130万円の壁』の見直し、子育て世帯に対する経済的支援の強化
2.
社会全体の構造・意識を変える
例)
こどもファースト社会の実現、職場の意識を変える、育児休業制度の自由度を上げる
3.
全ての子育て世帯を切れ目なく支援する
例)
親の就業形態に関わらず、どのような家庭状況にあっても分け隔てなく、ライフステージに沿って切れ目なく支援
こども・子育て支援加速化プラン 5つの柱
1.
制度のかつてない大幅な拡充
例)
児童手当:所得制限撤廃、高校卒業まで延長、手当額の拡充 男女で育休取得した場合、一定期間、育休給付を手取り100%に
2.
長年の課題を解決
例)
75年ぶりとなる保育士の配置基準の改善、こども医療費助成に係る国民健康保険の減額調整廃止
3.
時代に合わせて発想を転換
例)
共働き・共育ての推進(固定的な性別役割分担意識からの脱却)就労要件をなくし、こども誰でも通園制度(仮称)を創設
4.
新しい取組に着手
例)
伴走型相談支援の制度化、出産費用の保険適用を含めた在り方の検討、学校給食費の無償化に向けた課題の整理、授業料後払い制度(仮称)の創設
5.
地域・社会全体で「こどもまんなか」を実現
例)
こども家庭庁の下で「国民運動」を夏頃目途にスタート、育休や柔軟な働き方推進のための職場環境づくり(応援手当など)
【参考】
沖田 眞紀(おきた・まき)
特定社会保険労務士
社労士事務所コンフィデンス

千葉県出身。大手電機メーカーをはじめ、介護施設、建設関連会社等様々な業種で、人事労務を担当。長年の実務経験を活かし、現在は人事労務相談・助成金手続・就業規則作成などを中心に社会保険業務および各種相談業務を行っている。

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