インボイス制度における届出の注意点

木下 洋子
2023.08.24

 国税庁は、7月31日に「インボイス制度において事業者が注意すべき事例集」を公表した。インボイス登録の取下げ・取消しの届出、および2割特例適用に関する注意点が事例別に明示されているので、ご紹介する。
インボイス制度開始前にインボイス発行事業者の登録を取り下げるケース
 インボイス発行事業者の登録を済ませた事業者であっても、登録日前に取下書を提出することにより、インボイスの登録を取りやめることができる。多くの事業者は制度開始日の令和5年10月1日を登録日としていると思うが、この場合には、取下書はその前日(9月30日)までに提出する必要がある。インボイス制度開始後に登録申請書を提出した事業者が登録日までに登録を取り下げたい場合においても、取下書での対応となる。

 取下書の場合、発信主義でなく到達主義なので、郵送の場合は、暦の関係で、令和5年9月29日(金)必着となるので、注意が必要である。
インボイス制度開始後にインボイス発行事業者の登録を取り消すケース
 登録日以降にインボイス発行事業者の登録を取り消す場合は、取消しの手続きが必要となる。翌課税期間の初日から登録を取り消そうとするときは、翌課税期間の初日から起算して15日前の日までに「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」(以下「登録取消届出書」とする)を提出する必要がある。例えば、個人事業者や12月決算の法人が、令和8年1月1日から登録を取りやめたい場合は、令和7年12月17日までに提出する必要がある。登録取消届出書は、取下書と異なり発信主義のため、郵便等による場合はその郵便物等の通信日付印により表示された日に提出されたものとみなされる。

 取消し後の消費税の納税義務については、注意が必要である。

 免税事業者が「消費税課税事業者選択届出書」の提出不要の経過措置を受けて令和5年10月1日~令和11年9月30日までの日の属する課税期間中にインボイスの発行事業者となった場合は、登録日から2年を経過する日の属する課税期間の末日までは、納税義務は免除されない。ただし、令和5年10月1日を含む課税期間に登録した事業者については、その登録日を含む課税期間の納税義務は生じるが、その翌課税期間からは基準期間の課税売上高が1千万円以下である場合は納税義務がない。
消費税課税事業者選択届出書を提出した場合の2割特例適用の注意点
 インボイス制度を機に免税事業者からインボイス発行事業者として課税事業者になった場合には、納付税額を売上税額の2割にできる経過措置が設けられている(2割特例)。

 消費税課税事業者選択届出書と合わせて適格請求書発行事業者の登録申請書を提出し、令和5年1月から消費税の課税事業者となった事業者については、令和5年10月1日より前から消費税の課税事業者であることから、2割特例の適用を受けることができない。そのため、「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出した事業者で、消費税課税事業者選択届出書の提出により令和5年10月1日を含む課税期間から課税事業者となる事業者については、当該課税期間中に「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出することにより、消費税課税事業者選択届出書の効力を失わせる措置が設けられている。

 これにより、個人事業者や12月決算法人を例にとると、令和5年12月31日までに「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出することで、令和5年1月から9月分の納税義務が免除されることになり、令和5年10月1日からインボイス発行事業者(課税事業者)となるので、2割特例を適用することができるようになる。
出典:
木下 洋子(きのした・ひろこ)
マネーコンシェルジュ税理士法人

群馬県出身。大学卒業後、会計事務所勤務を経て現法人へ。法人成り支援や節税対策・赤字対策など、中小企業経営者の参謀役を目指し、活動中。年に数回の小冊子発行など、事務所全体で執筆活動にも力を入れている。趣味はピアノを弾くこと。

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