7月の大雨で被災した場合の奨学金・支援金について

森田 和子
2023.08.24

 多くの学生に利用されているのが日本学生支援機構の奨学金です。通常の申し込みは、春と秋の学校が指定する期間に行いますが、⽣計維持者の失職、病気、死亡などで家計が急変した場合には、年間を通じて申し込むことができます。家計の急変には災害によるものも含まれ、2023年7月の大雨災害による被害を受けた学生も対象になることが発表されています。床上浸水や半壊以上などの場合には、10万円の支援金の対象になる場合もあります。
家計が急変した場合の奨学金は通年申し込める
 対象に加わったのは、2023年7月7日からの大雨による災害により家計が急変し、奨学金の給付または貸与を希望する人です。この大雨では被害が広範囲にわたり、大分県中津市、島根県出雲市、秋田県能代市、青森県西津軽郡深浦町など他にも多数の地域が災害救助法適用地域に指定されています。対象地域の世帯の学生等の他にも、災害救助法の適用を受けない近隣の地域で、同等の災害に遭った世帯の学生等や、同地域に勤務し勤務先が被災した世帯の学生等で同等の災害に遭った場合についても、適用地域に準じて取り扱うものとされています。

 奨学金の種類には、返還不要の給付奨学金(家計急変採用)、利子のない第一種奨学金(緊急採用)、利子付の第二種奨学金(応急採用)があります。家計の急変により、それぞれの基準を満たすと支給されます。基準は、学校の種別、通学形態、生計維持者の年収、世帯人員などにより定められています。例えば、返還不要の給付奨学金は、住民税非課税世帯や、それに準じる世帯の学生が対象となり、私立大学に下宿して通う場合には、年収などによる区分に応じて月額25,300円~75,800円の奨学金が支給されます。卒業後に返還が必要な貸与奨学金は、生計維持者の収入などの基準が給付奨学金よりも緩くなります。例えば、利子付の第二種奨学金は、原則として月額20,000円~120,000円の貸与を受けることができます。いずれも、在学している学校を通じて申し込みます。
床上浸水や半壊以上が対象の支援金も
 また、返済不要の災害支援金も設けられています。学生やその生計維持者・留学生の住む家が、半分以上壊れる、床上浸水などの場合には、10万円の支援金が支給されます。以下の全てを満たした場合が対象となります。
(1)
日本国内の大学、短期大学、大学院、高等専門学校、専修学校専門課程に在学中であること。
(2)
自然災害や火災などにより、学生本人やその生計維持者が現に住んでいる家が、半壊(半流出・半埋没及び半焼失を含む)以上の被害、床上浸水、自治体からの避難勧告等が1か月以上続いたこと。
(3)
学修に意欲があり、修業年限で学業を確実に修了できる見込みがあると学校長が認める人であること。
 在学している学校を通じて申し込みます。
奨学金の返還が厳しい場合には減額や猶予の検討を
 奨学金の返還中で被災している方のための制度もあります。傷病、経済困難等により返還が難しくなった場合には、月々の返還額を1/2または1/3に減額し、適用期間に応じた分の返還期間を延長して返還する「減額返還」や、返還を先送りにする「返還期限猶予」の制度を利用できる場合があります。返還が難しい場合には、早めに日本学生支援機構に相談しましょう。
参考:
森田 和子(もりた・かずこ)
FPオフィス・モリタ 代表
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者、DCA(確定拠出年金アドバイザー)

大学卒業後、コンピュータソフト会社、生命保険会社勤務を経て、1999年独立。保険や投資信託の販売をしない独立系のファイナンシャル・プランナー事務所としてコンサルティングを行っている。
お金の管理は「楽に、楽しく」、相談される方を「追い詰めない」のがモットー。情報サイト・新聞・雑誌への執筆多数。企業・学校・イベントで行うマネープランセミナー・講演も好評。

ライフプランシミュレーションとマイホーム・老後の資金計算
FPオフィス・モリタ https://fpofficemorita.com/
教育費・住宅ローン・老後のお金 マネーのブログ
おかねネット https://okane-net.com/

▲ PAGE TOP