休憩時間の基本ルールを再確認しよう

庄司 英尚
2023.09.04

休憩時間と認められず、労働時間とされることも
 休憩に関しては、「休憩時間が十分にとれない」「休憩中でも電話番を兼ねている」など、インターネット上には従業員側からの相談や苦情などが多数紹介されている。もし休憩時間として与えていたものが法的な休憩の要件を満たさず、結果的に労働時間としてカウントされることになれば、未払残業代の問題に発展する可能性もある。

 一定時間を超える労働に対しては、「休憩時間」を適切に与えなければならないわけだが、会社の経営幹部の中には休憩に関する法律上の定めがわかっていない人もいるので、今回は休憩時間の基本ルールについてご紹介したい。
休憩は、分割して付与することも可能
 休憩時間については、労働時間が6時間を超え8時間以下の場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも60分の休憩を与えなければならないと労働基準法で定められている。労働時間が6時間ちょうどであれば、法律上は休憩時間を与えなくても違法とはならない。

 また、8時間ちょうどの場合も、そこから絶対に残業をすることがなければ45分の休憩を与えていればいいのだが、8時間を超えて1分でも残業するのであれば、1時間の休憩時間を与えなければならない。もちろんこれらは最低の基準であってそれ以上の休憩時間、たとえば1時間30分与えるのも会社の裁量で決定できる。

 なお、労働基準法で定められている休憩時間は、合計で所定の時間に達していれば、分割して付与することが可能だ。たとえば7時間の労働をする場合は45分以上の休憩を与えることが義務となるが、これを昼の12時から30分、午後3時から15分で合計45分の休憩としても問題はない。休憩は労働時間の途中で与えなければならないので、仕事が忙しいからといって、始業から休まず一気に8時間労働させてから最後に休憩を与えるということは認められていない。
休憩時間は従業員が自由に過ごせるようにすること
 原則として、休憩は従業員に対して一斉に与える必要がある。一部の従業員だけ休憩時間をずらすということは、認められていない。ただし、労使協定で休憩時間を一斉に与えない旨や、同じ時間に休憩を取らない人の範囲などを決めておくことで、一斉付与の原則が排除される。また運輸交通業、商業、金融・広告業、映画・演劇業、通信業、保健衛生業、接客娯楽業、官公署の事業については、労使協定を結ばなくても、従業員に対して交代で休憩を与えることができる。

 最後に、休憩時間は自由に過ごさせなければならないと定められていることから、従業員を業務から完全に解放することが求められている。通達においても「休憩時間とは単に作業に従事しないだけのいわゆる手待ち時間は含まず、労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間をいう」と明記されていることから、特に電話番や受付対応をしながらの休憩などは、休憩時間とはみなされない。会社側は、独自のルールをしていて法的に誤った運用をしていないか早急に確認しておきたい。
庄司 英尚(しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所(現・アイウェーブ社労士事務所)を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/

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