新認知症薬「レカネマブ」、わが国でも承認
2023.09.14
改めて「レカネマブ」の作用について整理
日本のエーザイ株式会社と米国のバイオジェン・インクが共同開発した新たな認知症治療薬「レカネマブ(商品名:レケンビ)」が、8月21日に開催された厚労省の薬事・食品衛生審議会で、製造販売承認された。同薬は7月6日に米国のFDA(食品医薬品局)でフル承認されたが、そこから2か月足らずでわが国での迅速承認に至ったことになる。
この「レカネマブ」については、注目のトピックスNo.4430でもふれているが、改めて特徴を整理しよう。同薬は、認知症の原因疾患でもっとも多いアルツハイマー病の治療薬として開発された。アルツハイマー病は、脳内でのアミロイドβという異常なタンパク質の蓄積が原因とされる。同薬は、このアミロイドβを除去して、アルツハイマー病の進行を抑制するという効果が期待されている。
現在処方されている認知症薬は、あくまで脳の神経細胞内での情報伝達の機能を整えるものであり、アルツハイマー病の原因物質を除去するものではない。つまり、対症療法的な効果しか期待できない。その点で、認知症で苦しむ本人・家族にとって今回の新薬への期待は大きいと言える。ただし、いくつか注意しておかなければならないことがある。
この「レカネマブ」については、注目のトピックスNo.4430でもふれているが、改めて特徴を整理しよう。同薬は、認知症の原因疾患でもっとも多いアルツハイマー病の治療薬として開発された。アルツハイマー病は、脳内でのアミロイドβという異常なタンパク質の蓄積が原因とされる。同薬は、このアミロイドβを除去して、アルツハイマー病の進行を抑制するという効果が期待されている。
現在処方されている認知症薬は、あくまで脳の神経細胞内での情報伝達の機能を整えるものであり、アルツハイマー病の原因物質を除去するものではない。つまり、対症療法的な効果しか期待できない。その点で、認知症で苦しむ本人・家族にとって今回の新薬への期待は大きいと言える。ただし、いくつか注意しておかなければならないことがある。
対象者は? 投与の方法は? 副作用は?
まずは処方が想定される対象者である。認知症の原因疾患にはさまざまなものがあるが、同薬の効果が期待できるのは、先に述べたようにあくまでアルツハイマー病を原因疾患とするものに限定される。割合的には少ないとはいえ、脳血管疾患やレビー小体症による認知症には適用されないと思われる。
また、現時点での処方対象想定されているのが、認知症の手前であるMCI(軽度認知障害)や軽度の認知症の人に限られる。中重度の人にも処方されるかどうかは不透明だ。
次に気になるのは、実際の投与と副作用に関する点だ。公益社団法人・認知症の人と家族の会がサイト上に掲載している解説動画によれば、治療イメージとして1回1時間程度の点滴投与を2週間おきに行なうとなっている(実際は異なることもあるので注意)。
そのうえで、5、7、14回めの投与前にMRI撮影を行ない、治療状況や脳浮腫などの副作用が生じていないかどうかが確認される。この脳浮腫のほかに、副作用としては急性輸液反応や頭痛、咳、下痢などが想定されている。
また、現時点での処方対象想定されているのが、認知症の手前であるMCI(軽度認知障害)や軽度の認知症の人に限られる。中重度の人にも処方されるかどうかは不透明だ。
次に気になるのは、実際の投与と副作用に関する点だ。公益社団法人・認知症の人と家族の会がサイト上に掲載している解説動画によれば、治療イメージとして1回1時間程度の点滴投与を2週間おきに行なうとなっている(実際は異なることもあるので注意)。
そのうえで、5、7、14回めの投与前にMRI撮影を行ない、治療状況や脳浮腫などの副作用が生じていないかどうかが確認される。この脳浮腫のほかに、副作用としては急性輸液反応や頭痛、咳、下痢などが想定されている。
米国では年間300万円とされているが…
患者としては、当然価格も気になる。米国では年間300万円という試算があるが、日本とは医療保険のしくみが異なるので、そのまま受け取るわけにはいかない。ただし、投与量は本人の体重あたりで計算されるので、平均体重が米国より低い日本人の場合は米国よりも価格が下がる可能性はある。
このあたりの詳細については、今後の厚労大臣による承認や保険適用時の価格決定を行なう中央社会保険医療協議会(中医協)の審議を待たければならない。なお、上記のように定期的なMRI撮影が必要となれば、その技術料がどうなるのかも気になるところだ。
もう一つ注意したいのは、先に述べた投与の対象となるのか否かを軽度の時点で検査する体制についての課題である。たとえば、患者や家族にとって、軽度から迅速な検査につながるだけの相談体制へのアクセスが保障されるのかどうか。今後の医療・介護制度の議論にも注目する必要がありそうだ。
このあたりの詳細については、今後の厚労大臣による承認や保険適用時の価格決定を行なう中央社会保険医療協議会(中医協)の審議を待たければならない。なお、上記のように定期的なMRI撮影が必要となれば、その技術料がどうなるのかも気になるところだ。
もう一つ注意したいのは、先に述べた投与の対象となるのか否かを軽度の時点で検査する体制についての課題である。たとえば、患者や家族にとって、軽度から迅速な検査につながるだけの相談体制へのアクセスが保障されるのかどうか。今後の医療・介護制度の議論にも注目する必要がありそうだ。
田中 元(たなか・はじめ)
介護福祉ジャーナリスト。群馬県出身。立教大学法学部卒業後、出版社勤務を経てフリーに。高齢者介護分野を中心に、社会保障制度のあり方を現場視点で検証するというスタンスで取材、執筆活動を展開している。
主な著書に、『2018年度 改正介護保険のポイントがひと目でわかる本』『《全図解》ケアマネ&介護リーダーのための「多職種連携」がうまくいくルールとマナー』(ぱる出版)など多数。
主な著書に、『2018年度 改正介護保険のポイントがひと目でわかる本』『《全図解》ケアマネ&介護リーダーのための「多職種連携」がうまくいくルールとマナー』(ぱる出版)など多数。
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