自筆証書遺言の保管通知対象者の範囲拡大

加藤 悠
2023.10.23

 生命保険の販売に携わっていると、お客さまから相続についてアドバイスを求められることがあるかと思います。そして、残された家族が財産の分け方についてトラブルとなる「争族」を避けるために「遺言書」を準備しておきたいとおっしゃるお客さまも、少なくないのではないでしょうか?
「遺言書の3つの形式」と「自筆証書遺言書保管制度」
 ひと言で「遺言書」といっても下記の3つがあります。
自筆証書遺言
遺言者が遺言の全文・日付・氏名を自書し、捺印したもの(財産目録については、パソコンでの作成やコピーも可)。
公正証書遺言
遺言者が口述した内容を公証人が筆記化したもの。公証人と証人が2人以上必要です。
秘密証書遺言
遺言者が遺言書に署名・捺印のうえ封印し、公証役場にて遺言書の存在についての証明(内容や形式については確認されません)を受けたもの。公証人と2人以上の証人が必要です。
 このうち、「自筆証書遺言」は気軽に作成できることや、公証役場で手数料等の費用がかからないメリットがありますが、遺言書には決められた形式があるため、不備があると遺言そのものが無効になってしまう可能性や、死後、家族(相続人)に遺言書が見つけてもらえないおそれが生じるなどのデメリットもあります。

 そのデメリットを解消する制度として2020年7月から「自筆証書遺言書保管制度」が始まっています。この制度により、遺言書に不備がないかのチェックをしてもらえ、さらに法務局で保管されるため、紛失や遺言書の改ざん等を防ぐことができます。また、法務局が遺言者の死亡の事実を確認すると、「遺言者が指定した方に、遺言書が保管されていることを通知する」ので遺言書を見つけてもらえないこともありません。
保管通知対象者の範囲拡大
 上記の「遺言者が指定した方への通知」を指定者通知と呼ぶのですが、この対象者の範囲が2023年10月2日から拡大されました。
2023年10月1日まで:受遺者等、遺言執行者または推定相続人のうち1名
    ↓
2023年10月2日以降:上記の者に限定されず、人数も3名まで
 この対象者の範囲拡大によって、遺言者の思いである「自身が亡くなった後に、遺言書の存在とその内容を知ってもらうこと」がより実現しやすくなるものと思われます。なお、指定者通知の対象者をすでに1名指定している場合でも、変更の届出により対象者を追加することができます。

 「自筆証書遺言書保管制度」では、制度開始以降2023年9月までの間に60,271件の遺言書を保管しています。生前贈与に関する税制も2024年以降の贈与から改正されるため、お客さまも相続や生前贈与について関心が高まっているタイミングです。お客さまへの情報提供のためにも、相続や生前贈与に関する知識を今こそ再確認されてはいかがでしょうか。
参照:
(セールス手帖社 加藤 悠)

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