男性の育児休業取得率の増加

三角 桂子
2023.10.26

 2021年6月に育児介護休業法が改正され、2022年4月より段階的に施行している。法改正により、育児休業は男性が子の出生時に就労しながら分割取得や、男女ともに育児休業の分割取得が可能となった。そのため育児休業が柔軟に取得できるようになり、出産・育児等による労働者の離職を防ぎ、男女ともに仕事と育児等を両立できるように整備された。
男性の育児休業取得率は道半ば?
 厚生労働省「2022(令和4)年度雇用均等基本調査」における男性育休取得率は17.13%。10年前の男性育休取得率1.89%(2012年)と比べ約9倍、20年前の0.33%(2002年)と比べ約52倍に増加している。かつての日本の考え方である「夫が外で働き、妻は家庭を守るべきである」から、女性の社会進出の増加や共働き世帯の増加により、男性の育児参加が必須となっている。

 2023年7月31日に、厚生労働省「イクメンプロジェクト」による「2023(令和5)年度男性の育児休業等取得率の公表状況調査」(速報値)の結果によると、男性の育児休業取得率は46.2%と、前段の17.13%とは大きな隔たりがあるのはなぜだろうか。ここで、日本の企業数の99.7%を占めているのは中小企業・小規模事業者であることが頭に浮かぶ。

 46.2%は従業員数1,000人超の企業に対して、育児休業等取得率の公表状況や公表による効果等に関して調査を実施した数値である。中小企業庁で示す中小企業の定義から推測すると一概には言えないが、中小企業の男性の育児休業取得率は道半ばであることがうかがえる。
目標は30%→50%に引き上げ
 政府は令和5年6月13日に閣議決定した「こども未来戦略方針」において、男性の育児休業取得率の目標を「2025年までに30%」から、同年までに「50%」に引き上げている。2025年までに17.13%を50%にするには、法整備だけでなく、さらなる中小企業への働きかけ(協力)が必要である。
若い世代は積極的に育児休業を取得したいと思っている
 厚生労働省の調査では、男性正社員について、育児休業制度の利用を希望していたが、利用しなかった割合は約4割(37.5%)。制度を利用しなかった主な理由は「収入を減らしたくない」「制度を利用しづらい雰囲気」「会社内で制度が整備されていない」である。

 男性の制度利用が促進しなければ、女性に子育ての負担がかかり、女性が復職しても、仕事を継続していくことが難しいのは昔と変わらないだろう。

 法整備が進む中、さらなる労働者本人の意識改革と、育児休業取得を後押しする企業を全面的にバックアップする体制が求められているのではないだろうか。
参考:
三角 桂子(みすみ・けいこ)
社会保険労務士法人エニシアFP 代表社員
FP・社会保険労務士

大学卒業後、公務員、専業主婦、自営業、会社員、シングルとあらゆる立場を経験し、FPと社会保険労務士として開業し、5年目に法人化(共同代表)。
FPと社会保険労務士の二刀流を強みに、法人・個人の労務、年金の相談業務やセミナー、執筆など、幅広く行っている。
常に自身の経験を活かし、丁寧な対応を心がけ、生涯現役に向かって邁進中。
法人名はご縁(えにし)に感謝(ありがとう)が由来。

公式サイト https://sr-enishiafp.com/

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