生命保険料控除の改正は令和7年度税制改正に持ち越しへ

堀 雅哉
2024.02.01

 令和6年度税制改正については大綱が2023年12月14日付で公表され、その後、12月22日に閣議決定されて、通常国会において審議が行われる。大綱の発表前の時期になると新聞やテレビなどでもその具体的な内容に関する報道が行われるようになるが、その中でにわかに「生命保険料控除の改正(拡充)」が取り上げられるようになった。

 しかし、ふたを開けてみると、今回の税制改正の柱の一つと考えられる「子育て支援に関する政策税制」の一環の「子育て世帯に対する生命保険料控除の拡充」として、大綱の「第一 令和6年度税制改正の基本的な考え方」では方向性についての記載はあるものの、令和7年度税制改正において検討し、結論を得るとされ、今回の税制改正では決着せずに持ち越しとなったようである。

 それでは、どういう方向性が示されたのかについて見て行きたい。
今回の生命保険料控除の拡充は“子育て世帯”支援の一環
 生命保険料控除制度とは、納税者が生命保険契約に基づいて支払った生命保険料について、受取人や保険商品等に関する要件を満たすことで、別途定める金額を課税所得から控除することが認められるという所得控除の一つであり、保険商品の種類によって、一般生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除の3種類で構成されている(2012年1月1日以降の契約の場合。以降、同じ)。生命保険料控除の控除限度額は、一般生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除の各々で年間4万円(所得税の場合)、合計で12万円とされている。

 令和6年度税制改正大綱に記載される拡充の内容は、この中の遺族保障についての一般生命保険料控除が対象となっており、現行で年間4万円の控除額に2万円の上乗せ措置を講ずる(拡充後は6万円)とされている。ただし、払い方が一時払の契約については、既に資産を一定程度保有している者が利用していると考えられるため、万が一のリスクへの備えに対する自助努力への支援という趣旨に合致しないため、生命保険料控除適用の対象外とする方向性も併せて示されている。
控除額合計の限度額は年間12万円に据置
 一方、生命保険料控除の合計控除限度額については現行の12万円に据置の方向性が示されている。理由としては、実際の控除額の平均が限度額である12万円を大きく下回っている実態を踏まえてとしているが、そこで、控除額の実績がどの程度なのかを見てみると、2021年(令和3年)で6.8万円、2015年(平成27年)以降2021年(令和3年)までの6年間では、6.5万円~6.8万円の範囲で増減している状況なので、12万円という限度額の半分強という状況のようである。ちなみに、今回の拡充の対象となる一般生命保険料控除の平均額は2021年(令和3年)の実績で3.8万円、ほぼほぼ上限額であり、今回の拡充の結果、どのような変動が起こるのかに興味が持たれるところである(出典:令和6年度税制改正要望事項)。
最終的な内容の確定は令和7年度税制改正において決定
 実は、生命保険料控除拡充の要望は毎年、金融庁から税制改正要望事項として提出されているが、今回は「子育て世帯支援」という政策の一環の中で税制改正項目に取り上げられる結果となった。ただし、具体的な方向性は今回の大綱において明示されたものの、引き続き検討を行い、令和7年度税制改正において結論を得るとされている。「生命保険料控除における“新生命保険料”に係る~」という大綱での記述からして既契約の保険料への適用はなく、別途定められた時期以降の契約日の保険契約を対象とするのではないかと考えられるが、適用対象となる契約日がいつ以降になるのかについての記載はない。また、住民税の取扱いについてもまったく触れられておらず、それらのことも含めて検討が続けられ、実務的な内容も含めて決定されると考えられるので、引き続き推移を見守っていきたいところである。
参考:
(セールス手帖社 堀 雅哉)

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