中小企業も他人事ではない、内部通報制度とは?

庄司 英尚
2024.02.05

保護対象となる通報者は、パートタイマーや退職1年以内の元従業員も
 消費者庁は、令和5年11月に「内部通報制度を活用して信頼度UP!~公益通報者保護法をご存じですか?~」を発行した。内部通報制度の概要、導入手順、通報方法等について案内する全12ページのリーフレットで、巻末にチェックリストが付いている。中小企業にとって内部通報制度はわかりにくいところなので、今回は押さえておきたい基本的なポイントをまとめておくこととする。

 公益通報者保護法は、従業員が勤め先の不正行為を通報したことを理由として解雇や降格、不自然な異動などの不利益な取扱いから保護されるための条件を定めている。2020年6月の公益通報者保護法の改正により、従業員数(アルバイト、契約社員、非正規社員、派遣労働者等も含む)が301人以上の企業には、内部通報制度の整備が義務付けられた。また、従業員数が300人以下の企業は、内部通報制度の整備に努めることとされている。

 企業が、組織内の不正行為に関する従業員等からの通報を受付け・調査・是正する制度として内部通報制度があるわけだが、その制度を積極的に活用している企業は、投資家からも高く評価されているようだ。

 内部通報制度において保護の対象となる通報者の範囲は、役員や正社員だけでなく、従業員全般――具体的には、派遣社員、アルバイト、パートタイマー、業務委託先の従業員や派遣社員、さらには退職して1年以内の元従業員と幅広い。

 通報できる内容は、すべての法令違反行為が対象となるわけではなく、「国民の生命、身体、財産その他の利益の保護」に関わる法律(約500本)に規定する犯罪行為もしくは過料対象行為、または最終的に刑罰もしくは過料につながる行為が対象だ。例えば、個人情報保護法、労働基準法、建築基準法などの違反は当然含まれており、保険金の不正請求、品質データ改ざん、不正会計、食品偽装など、過去に世間を騒がせた有名な事件もこの内部通報制度がきっかけになったものもあると思われる。
不正行為を止めるためにも早期に通報すること
 公益通報の対象となる通報先は3種類あり、それぞれ不利益な取り扱いから保護されるための条件が異なっている。
通報先 保護の条件
勤め先(内部通報窓口、上司など) 不正があると思うこと
行政機関 ①不正があると信じるに足りる相当の理由があること(目撃情報・証拠があることなど)、又は、②不正があると思い、氏名などを記載した書面を提出すること
報道機関等 ①不正があると信じるに足りる相当の理由があること(目撃情報・証拠があることなど)、及び、②証拠が隠滅されるおそれが高い、組織内で不正が蔓延しているなどの事情があること
 このような公益通報にあたる通報であれば、通報対象者に対する損害賠償請求も禁止されている。自分自身だけではなく会社や顧客、同僚、取引先、株主、消費者等を守るためにも不正行為を発見したら、早期に通報し、不正行為を止めることこそが何より大事であることを覚えておきたい。
参照:
庄司 英尚(しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所(現・アイウェーブ社労士事務所)を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/

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