2024(令和6)年度の老齢基礎年金の満額は80万円超

三角 桂子
2024.02.15

 2024年1月19日に厚生労働省から「令和6年度の年金額改定についてお知らせします」が発表されました。プレスリリースによると、年金額は前年度から2.7%の引上げです。

 これは、総務省の令和5年平均の全国消費者物価指数の公表を踏まえての発表です。特に年金を主な収入源として生活されている人にとっては、毎年明けになると、来年度の年金額の上下が気になるところでしょう。
年金額は上がっているものの、実は抑えられている?!
 2023年度の老齢基礎年金の満額(40年間)は年額79万5,000円(月額6万6,250円)です。2024年度では年額81万6,000円(月額6万8,000円)なので、年額で2万1,000円(月額1,750円)の増額です。

 年金額は、物価と賃金の変動率によって毎年度改定されます。2024(令和6)年度は、物価変動率が(+3.2%)、名目手取り賃金変動率が(+3.1%)でした。そのため、「物価>賃金」の場合、支え手である現役世代の負担能力に応じた給付とする観点から、賃金変動率を用いると定められているので、3.1%増になるのですが…

 しかしながら、社会情勢(現役世代の人口減少や平均余命の伸び)に合わせて、年金の給付水準を自動的に調整するマクロ経済スライドにより、▲0.4%調整されます。そのため、2024(令和6)年度の年金額は、前年度から+2.7%(3.1%−0.4%)の改定となりました。

 つまり、年金額が上昇しても、物価の上昇率に追いつくことができないため、世間等では「目減りしている」と騒がれてしまうのです。
4月改定でも実感できるのは6月から
 年金は偶数月の15日に支払われます。15日が土日または祝日のときは、その直前の平日に支払われます。年金額の改定は毎年4月からとなりますが、年金は後払いのため、4月分は5月分と2か月分を合わせて6月15日に支払われるのです。

 毎年、4月15日過ぎると年金額のお問い合わせが増加します。4月15日から変更すると勘違いされる人が多いからです。

 特に、退職して在職老齢年金の減額が無くなる場合や配偶者の年齢によって加給年金等が増減する場合など、金額が大きく変わる時がありますが、支払われる月が後になるため注意が必要です。
まとめ
 2024年度の年金額が発表され、2年連続の増額改定となりましたが、これからも少子高齢化により、高齢者を支える現役世代(生産年齢人口)が減少する現状では、マクロスライドによる調整により年金額が抑えられてしまう現象が続く可能性は否めません。

 年金収入が主体となっている高齢者にとって、年金額が物価の伸びに追いつかないため、家計的にはまだまだ厳しい状態が続きそうです。

 ただ、年金額が80万円超えたという点では、嬉しい話題となるはずです。前向きに捉えて過ごすことは大切ではないでしょうか。
参考:
三角 桂子(みすみ・けいこ)
社会保険労務士法人エニシアFP 代表社員
FP・社会保険労務士

大学卒業後、公務員、専業主婦、自営業、会社員、シングルとあらゆる立場を経験し、FPと社会保険労務士として開業し、5年目に法人化(共同代表)。
FPと社会保険労務士の二刀流を強みに、法人・個人の労務、年金の相談業務やセミナー、執筆など、幅広く行っている。
常に自身の経験を活かし、丁寧な対応を心がけ、生涯現役に向かって邁進中。
法人名はご縁(えにし)に感謝(ありがとう)が由来。

公式サイト https://sr-enishiafp.com/

▲ PAGE TOP