4社に3社、横領したら懲戒解雇

庄司 英尚
2024.02.26

売上金100万円を使い込んだらどうなるか?
 一般財団法人労務行政研究所は、2023年8月に各企業の懲戒制度の内容や、30のケース別に見た懲戒処分の適用判断などを調査し、全国の上場企業やそれに匹敵する非上場企業(資本金5億円以上かつ従業員500人以上など)の中から回答があった225社からの調査結果をまとめて発表している。

 調査結果によると、最も重い懲戒処分である「懲戒解雇」の適用ケースとして、「売上金100万円を使い込んだ」場合、75.9%の企業が懲戒解雇を適用すると回答していることが明らかになった。横領に限らず中小企業においても懲戒処分に該当する問題行動を起こす従業員は結構いるので、このようなデータから最新の実態を把握したうえで自社の状況を振り返ってみていただきたい。
懲戒解雇では、退職金は「全く支給しない」63.2%
 問題行動である30のケースが起こったと仮定して、被懲戒者にどのような処分をするのか聞いたところ、懲戒解雇の割合が高いのは、第1位が「売上金100万円を使い込んだ」であり、第2位が「無断欠勤が2週間に及んだ」(74.1%)、第3位が「社外秘の重要機密事項を意図的に漏えいさせた」(69.4%)と続いている。4位以下も「業務に重大な支障を来すような経歴詐称があった」「満員電車で痴漢行為をして鉄道警察に捕まり、本人も認めた」「終業後に酒酔い運転で物損事故を起こし、逮捕された」などが続き、懲戒となる大体の傾向は理解できる。

 次に懲戒解雇における退職金の支給状況に関して聞いたところ、懲戒解雇では退職金を「全く支給しない」が 63.2%、諭旨解雇では退職金を「全額支給する」が30.5%で最も多く、「全額または一部を支給する」の4.7%と「一部支給する」の20.0%を合わせると諭旨解雇の場合は半数以上が何らかの支給を行っている。
懲戒処分は就業規則がなければ、科すことができない
 設定している懲戒処分の種類を見ると、「懲戒解雇」はすべての企業で設定されており、「譴責(けんせき)」「減給」「出勤停止」もそれぞれ9割以上が設定している。また、懲戒処分の実施パターンで最も多いのは、「譴責、減給、出勤停止、降格・降職、諭旨解雇、懲戒解雇」の6 段階で、31.5%の企業が採用している。

 懲戒解雇の意味は知っていても、懲戒処分の種類やその実務についてはわからない方も多い。就業規則に懲戒処分の根拠が規定されていなければ懲戒処分自体行うことができないので、これを機会に就業規則の懲戒処分に関連する項目の見直しを検討してみてもいいのではないだろうか。
参照:
庄司 英尚(しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所(現・アイウェーブ社労士事務所)を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/

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