高齢者の「おひとりさま」 身元保証への対応

西海 重尚
2024.04.08

高齢者の「おひとりさま」が抱える身元保証の問題
 内閣府が出している「令和5年版高齢社会白書」によれば、65歳以上でひとり暮らしをしている人は、2000(平成12)年には65歳以上の男女それぞれの人口に占める割合が男性は8.0%、女性は17.9%であったものが、2020(令和2)年には男性が15.0%、女性が22.1%となっており、今後もさらに増加していくことが予想されている。
【65歳以上のひとり暮らしの者の動向】
2000年
(平成12)
2010年
(平成22)
2020年
(令和2)
2025年
(令和7)
2030年
(令和12)
2040年
(令和22)
男 性 8.0% 11.1% 15.0% 16.8% 18.2% 20.8%
女 性 17.9% 20.3% 22.1% 23.2% 23.9% 24.5%
※2025(令和7)年以降は推計値
 高齢者の場合、病院への入院、介護施設への入所、賃貸住宅への入居などの際には、身元保証が求められることが多い。高齢者がひとり暮らしであっても、家族や親族がいれば、身元保証人になってくれることも考えられるが、頼れる人がいないということもあり得る。病院や介護施設としては、高齢者本人に十分な支払い能力はあるのか、判断能力低下の問題はないのかなどが気になるからである。
身元保証人の役割
 では身元保証人の役割としては何が求められるのか。まず考えられるのは、高齢者本人に何かあったときの緊急連絡先としての役割である。もしものときに誰に連絡すれば良いのかがわからないと、病院や介護施設はその後の対応がとれない。

 その他には、治療や介護についての対応方針の決定、必要な物品の提供、医療費や施設費の支払い、死亡したときの遺体の引取りや葬儀の手配などが考えられる。このように身元保証人の役割は簡単なものではなく、多方面にわたる対応が求められる。
家族や親族に頼らずに身元保証人を探す
 家族や親族の誰かが身元保証人を引き受けてくれればよいが、誰が面倒をみるのか、今の時代は身内とはいえ、なかなか決まらないことも多い。また、自分のことは最後まで自分でやりたいと考えている高齢者も多い。そのような場合には、自治体や民間会社の身元保証サービスを利用することが考えられる。

 終活に対する関心の高まりから、最近では特に「高齢者のおひとりさまへの支援」を行う民間会社が増えてきた。サービス内容は、病院・介護施設・賃貸住宅などの「身元保証サービス」のほか、自宅で生活する際の「見守りサービス」、「成年後見契約」などがある。さらには死後のサポートとして「死後事務委任契約」を締結し、「遺体の引取り・葬儀・埋葬・納骨」、「役所などへの届け出手続き代行」、「遺品整理」などに対応してくれる。ひとり暮らしの高齢者にとっては検討すべきサービスである。

 ただし、提供を受けるサービス内容によっては、数十万円から百万円以上の費用がかかるケースもある。利用にあたっては、具体的なサービス内容の範囲と費用について、よく確認する必要がある。
西海 重尚(にしうみ・しげひさ)
西海FP事務所 代表
CFP®認定者、1級 ファイナンシャル・プランニング技能士、公的保険アドバイザー、終活アドバイザーなどの資格を保有。

慶應義塾大学 経済学部卒。
33年間のサラリーマン生活において大手損害保険会社、生命保険会社、FP系出版社に勤務。
現在は独立系FPとなり、保険のアドバイザーとして活動中。

自己紹介用ホームページ https://fuku29390fpo.com

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