今回の税制改正による交際費の取扱いの改正事項について

堀 雅哉
2024.04.22

交際費の損金不算入制度
 令和6年度税制改正法案が国会で可決・成立し3月30日に公布されたことで、昨年末に発表された税制改正大綱の内容が具体的に施行されるが、その中から交際費の損金不算入制度に関わる取扱いの内容をみてみたい。

 法人が支出する交際費は原則として損金不算入であるが、一部、損金不算入の対象外となる金額が設定されており今回の改正内容を反映するとその概要は以下のとおりとなる。
(1)
交際費のうちの飲食費用について
2024年(令和6年)4月1日以降の支出において、1人当たり10,000円以下の飲食費用については損金算入が可能(今年度の改正項目。これまでは「1人当たり5,000円以下」)
役員や従業員等に対する接待のために支出する飲食費用(いわゆる社内接待費)は金額に関わらず損金不算入となる(つまり、1人当たり10,000円以下であっても損金算入は認められない)。
交際費として計上される飲食費用について、年間の50%相当額まで損金算入が可能。
 なお、資本金100億円超の法人については上記①と③の適用対象外となる。
(2)
中小法人における交際費の損金不算入の取扱い(期間限定の特例措置)
 2027年(令和9年)3月31日までに開始する事業年度において、中小企業(資本金1億円以下の法人)における交際費については年間800万円(該当の年度が12カ月未満の場合は月数で按分した金額)までの損金算入が可能となる(今年度の改正項目。「2024年(令和6年)3月31日までに開始する年度まで」のところ3年間特例適用期間を延長)。

 なお、中小法人は2027年(令和9年)3月31日までに開始する事業年度においては、上記1の(3)と当基準のどちらか一方を選択して適用することになる(一方、1人当たり¥10,000以下の飲食費を損金算入できる基準は重複して適用できる)。

 損金算入可能な交際費の基準を理解する際には、上記(1)はすべての法人(資本金100億円超は除く)が対象であり、(2)は中小法人のみが対象であること(つまり、適用対象となる法人の区分)、もう一つ、上記(1)は交際費の中の一部である「飲食費用」だけを対象としており、その他の交際費、たとえば得意先への慶弔費などは対象外であるのに対して、(2)は「交際費」全体を対象としていること(つまり、「飲食費用」と「交際費」の区分)に注意を要する。

 そのうえで、中小法人としては、(1)の③と②(期間限定の特例措置)の選択を考える際、対象を飲食費用に絞ってでも損金算入額の上限がない方とするのか、それとも損金算入額に800万円の上限があっても対象を交際費全体に範囲を広げる方とするのかについては、交際費の大部分が飲食費用なのか、それとも飲食費用以外の交際費が多いのか、についてももちろんであるが、飲食費用の割合が多い場合でも1人当たりの金額が低額(¥10,000以下)のものが多い場合や、交際費全体として年間合計額が800万円以内に収まっているようであれば、上記の②の選択が有利と考えられる場合もあり、事業の実態を鑑みて判断することが必要となる。
(セールス手帖社 堀 雅哉)

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