鉄道会社が銀行業務参入へ

高橋 浩史
2024.05.09

 JR東日本グループブランドのデジタル金融サービス、「JRE BANK」が2024年5月9日から始まります。その概要や参入の背景を見てみます。
JR東日本による銀行業務が開始
 日本の鉄道会社による銀行業務への参入は、2023年9月に開始した京王電鉄の「京王NEOBANK」(銀行機能の提供は住信SBIネット銀行)に次ぐ2例目となります。

 JRE BANKの金融システムのインフラ提供は、楽天銀行です。その銀行機能を利用し、JR東日本グループのカード会社である株式会社ビューカードが楽天銀行の所属銀行となり、銀行代理業者として各種サービスを提供する仕組みとなっています。

 利用者は、スマートフォンのアプリあるいはウェブサイトから口座開設すれば、入出金、振込、定期預金などの取引が可能になる他、JRE BANKブランドのデビット機能付キャッシュカードや住宅ローンなど、楽天銀行提供のサービスも利用できます。

 鉄道会社ならではの特典として、資産残高に応じて運賃の割引券をデジタルクーポンとしてもらえる他、JR東日本グループの商業施設でのポイントサービス、ホテルやレンタカーの割引特典なども提供されます。
JRE BANK誕生の背景は?
 鉄道会社が銀行業務へ参入する背景は何なのか? そのヒントは、JR東日本グループ経営ビジョン「変革2027」にあります。

 資料の中では、働き方の変化(テレワークの定着)、沿線人口の減少、自動運転の実用化などで、鉄道移動ニーズが減少し、利益が圧迫されるリスクが指摘されています。

 そういったことを踏まえ、鉄道を起点としたサービス提供から、ヒトを起点とした価値・サービスの創造に転換することを、新たな成長戦略にするとしています。銀行への参入は、こうした経営環境の変化に対する回答と考えることもできそうです。

 JRE BANKを起点に、電子マネーSuica(スイカ)で蓄積したさまざまな情報を活用しながら、今後どのようなサービスが展開されるのかに注目が集まりそうです。
参考:
高橋 浩史(たかはし・ひろし)
FPライフレックス 代表
日本ファイナンシャルプランナーズ協会CFP®
1級ファイナンシャル・プランニング技能士

東京都出身。デザイン会社などでグラフィックデザイナーとして20年活動。 その後、出版社で編集者として在職中にファイナンシャル・プランナー資格を取得。2011年独立系FP事務所FPライフレックス開業。 住宅や保険など一生涯で高額な買い物時に、お金で失敗しないための資金計画や保障選びのコンサルタントとして活動中。 その他、金融機関や出版社でのセミナー講師、書籍や雑誌での執筆業務も行う。
ホームページ http://www.fpliflex.com
ブログ http://ameblo.jp/kuntafp/

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