共働き夫婦の年金~遺族年金~

三角 桂子
2024.06.24

前回(No4678)に引き続き「共働き夫婦の年金」についてお伝えします。今回は、遺族年金についてです。共働き夫婦が増加する中、お互いが社会保険に加入して働くと高齢期に受け取る老齢年金は増え、老後の不安は解消されそうです。

 では、夫婦のどちらかが亡くなった時に受け取る遺族年金はどうなるのでしょうか。遺族年金は、一家の働き手の人や年金を受け取っている人が亡くなった時、残された家族の生活保障となります。
年金を受け取っている人の遺族年金
 年金を受け取っている人が亡くなった時、要件を満たす遺族に支給されるのが遺族年金です。遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」がありますが、今回取り上げるのは遺族厚生年金となります。

 遺族厚生年金の計算は、亡くなった人の厚生年金の加入期間や報酬の額をもとに「亡くなった人の老齢厚生年金の4分の3」で計算します。

 老齢厚生年金の4分の3であるため、共働き夫婦で報酬額が同じ程度であれば、受け取る年金額も同じくらいになります。仮に妻の老齢厚生年金が高額だと、夫が亡くなったときの遺族厚生年金は全額支給停止となり、残念ながら遺族厚生年金を受け取ることが出来ません。

 というのも、遺族厚生年金と自身の老齢厚生年金の両方を受け取れる権利がある場合、両方とも全額受け取れるのではなく、まず、自身の老齢厚生年金を受け取り、遺族厚生年金は差額支給となります。これを「先あて」といいます。

 ただし、65歳以上の配偶者に限っては、「亡くなった人の老齢厚生年金の2分の1」の額と「自身の老齢厚生年金の額の2分の1」の額を合算したものと、前述の「亡くなった人の老齢厚生年金の4分の3」の額と比較し、いずれか高い方の額を遺族厚生年金の額として計算する例外規定があります。

 夫婦ともに老齢厚生年金が同額ぐらいの場合でも、この例外規定の計算方法で求めると、遺族厚生年金を受け取ることができるケースもありますが、前述の「先あて」による差額支給であることに変わりはなく、遺族厚生年金として受給できる額は少額となるのが一般的です。
遺族年金より夫婦で長く老齢年金を受け取る
 年金は、仕事を引退し働けなくなった時の備えとなります。夫婦で長く働くと、高齢期の日常生活は2人の年金で賄えるでしょう。

 遺族厚生年金だけに焦点をあてて考えれば、共働きで厚生年金に加入することのメリットは多少薄れてしまいますが、夫婦のどちらが長生きするのか、何歳まで生きるのか、わかりません。万一のときの損得勘定までは考えず、健康寿命を延ばし、夫婦で長く老後の年金を受け取ることが一番ですね。
三角 桂子(みすみ・けいこ)
社会保険労務士法人エニシアFP 代表社員
FP・社会保険労務士

大学卒業後、公務員、専業主婦、自営業、会社員、シングルとあらゆる立場を経験し、FPと社会保険労務士として開業し、5年目に法人化(共同代表)。
FPと社会保険労務士の二刀流を強みに、法人・個人の労務、年金の相談業務やセミナー、執筆など、幅広く行っている。
常に自身の経験を活かし、丁寧な対応を心がけ、生涯現役に向かって邁進中。
法人名はご縁(えにし)に感謝(ありがとう)が由来。

公式サイト https://sr-enishiafp.com/

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