最近、耳にすることのある「寄附金控除」とは?

堀 雅哉
2024.07.11

 確定申告の時期ではないが、「寄附金控除」という税制に対して一部で関心が持たれているようである。そこで、今回は「寄附金控除」についてその概要に触れてみたい。
「寄附金控除」は基本的には所得控除制度の一つ
 「寄附金控除」は基本的には所得控除制度の一つであり、納税者が国や地方公共団体、特定公益増進法人などに対し、「特定寄附金」を支出した場合に適用が認められる。「特定寄附金」とは、国、地方公共団体に対する寄附金や公益社団法人、公益財団法人その他公益を目的とする事業を行う法人または団体に対する寄附金のうち所定のもの、その他、政治活動に関する寄附金のうち一定のものなど、その範囲が定められている。ただし、学校の入学に関してするもの、寄附をした人に特別の利益がおよぶと認められるもの、および政治資金規正法に違反するものなどは特定寄附金に該当しないとしており、当然のことながら、“寄附”という名目のものすべてが適用の対象となるわけではない。

 寄附金控除が適用されれば、「その年に支出した特定寄附金の金額(ただし、その年の総所得金額等の40パーセント相当額が上限)-2,000円」で計算された金額が「所得控除」として課税所得から控除され、それにより税負担が軽減されることになる。
寄附先によって税額控除を選択できる場合がある
 寄附先が次のような場合には上記の所得控除に代わって税額控除の選択が可能となる。
(1)
公益社団法人等への寄附
公益社団法人等とは、公益社団法人および公益財団法人、社会福祉法人、国公立大学法人、私立学校など
(2)
認定NPO法人等
(3)
政党または政治資金団体(以降、政党等)
 これらの団体に対して行った寄附については、以下の計算式で算出された金額(特別控除額)を税額控除することができる。
 なお、「その年中に支払った一定の要件を満たす寄附金の金額の合計」は総所得金額等の40%が上限、また、特別控除額はその年分の所得税額の25%が上限とされる((1)~(3)の複数の寄附先に寄附をした場合の上限額については別途取扱いが定められている)。

 この制度を適用できた場合、きわめて大雑把に言えば、これらの寄附先への寄附金は要件がそろえば寄附金額の40%(政党等の場合は30%)相当額が戻ることもあり得ることとなる。

 そして、これらの寄附先への寄附金に関わる寄附金控除は、所得控除を適用するのか、税額控除を適用するのか両者を比較して有利な方を選択することができる。
適用するためには確定申告が必要
 寄付金控除は確定申告により税額に反映され、確定申告書に添付が必要となる書類が定められている(以下は概要)。
(1)
特定寄附金(所得控除)
寄附した団体などから交付を受けた寄附金の領収証、および、その他に定められた添付書類
(2)
特別控除額(税額控除)
確定申告書に控除を受ける金額についてその控除に関する記述があること
各種の「特別控除額の計算明細書」および寄附金の内容を証明するために別途定められている書類
 寄附金控除の適用は、もちろん全くノーチェックでスルーされるものではなく、法令で定められた寄附金の内容であるかどうかは、確定申告書に添付が必要な書類等の確認により行われることになる。
今後、制度の見直しがあるのか
 最近、「政党等寄附金特別控除制度」を適用した税額控除に関して問題視される事例を指摘する報道等が見受けられる。前述のとおり、確定申告で税額控除されれば寄附金の30%相当額が寄附をした側に戻る場合があり得るが、政治家がこの制度を適用することが果たして当制度の目的に則したものであるのかに議論が起こっているようだ。もっとも、政治資金規正法に違反する寄附や寄附をした者に特別の利益が及ぶと認められるものは寄附金控除の対象外とされており、現行制度においても「寄附金」という名目のものがすべて寄附金控除の対象にできるというものではない。

 現状の取扱いでは制度のそもそもの目的にそぐわない適用が発生することが起こりうるということであれば、寄附金控除制度の在り方自体が今後の税制改正の議論の対象となることも考えられ、その行方が引き続き注視されるところである。
参考:
(セールス手帖社 堀 雅哉)

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