戸籍証明書等の広域交付について

田中 一司
2024.07.29

戸籍法の改正
 相続が発生した場合、相続人が誰であるかを調べるため、被相続人の出生から死亡までの一連の戸籍の証明書*1が必要となります*2。同一人の戸籍は、婚姻や転籍などによって新戸籍が編成され、また法改正によって今までの戸籍が改製され、新しい戸籍が作成されることもあります。そのため、出生から死亡までの戸籍が1通では済まないケースの方が多いと考えられます。特に、婚姻や転籍で市区町村をまたいで本籍地を移動した場合、新しい戸籍から以前の本籍地を調べ、その本籍地の自治体に戸籍の発行を依頼することになります。

 また、相続人の中にすでに死亡している人がいるときは、代襲相続人について調べるため、その死亡した相続人についても出生から死亡までの戸籍が必要となります。これは非常に手間がかかり、また、本籍地が存在する(した)自治体が遠方の場合、郵送でのやり取りとなるため、時間もかかります。

 この状況を改善するため2024年(令和6年)3月1日より、戸籍法が改正されました。これにより、最寄りの市区町村の窓口で戸籍を請求すると、法務省の戸籍情報連携システムを利用し、一連の戸籍をまとめて請求できるようになります。

 相続手続等を行う際に非常に便利な制度ですが、注意しなければならないことがあります。主な注意点は以下の通りです。
コンピュータ化される以前の戸籍には対応していない
本人、直系尊属、直系卑属、配偶者の戸籍について請求できるが、兄弟姉妹については請求できない
本人が窓口に出向く必要があり、郵送による請求や代理人による請求はできない
弁護士、司法書士、税理士等の職務上請求では利用できない
戸籍一部事項証明書(戸籍抄本)や戸籍の付表には対応していない
 このように、すべての場合に対応が可能というわけではありませんが、今までに比べると戸籍を集めることが非常に便利になりました。

 戸籍法の改正では、今後マイナンバーの活用による戸籍の添付が不要になる制度などが予定されています。お客さまにアドバイスを行う機会があった場合、この制度も合わせてお伝えすることが大切です。
*1
戸籍関係の証明書には、戸籍全部事項証明書、戸籍謄本などいくつかの種類がありますが、本稿ではまとめて「戸籍」と表記しています。
*2
明らかに子供がいないような年少時の戸籍については省略できる場合もありますが、提出先(裁判所や登記所、銀行など)の判断によります。
参考:
(セールス手帖社 田中一司)

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