育児休業給付金の延長手続きの変更について

森田 和子
2024.08.08

 育児で仕事を休む時に給付金を受け取れるのが、育休手当とも呼ばれている育児休業給付金の制度です。原則は、子供が1歳になるまでとなっていますが、特別な理由がある場合には、子供が2歳になるまで認められます。しかし、自治体からは、「保育所等への入所意思がなく、給付延長のために申し込みを行う人への対応に時間が割かれる」、「意に反して保育所等への入所が内定となったとの苦情対応に時間を要している」として、見直しの要望が出ていました。自治体の事務負担を軽減するとともに、制度の適切な運用を図るため、延長手続きの方法が見直されます。内容を確認していきましょう。
会社員などの育児休業期間に支給
 出産の前後の休業、いわゆる産休は、法律で休むことが認められている期間です。 出産前6週間と出産後の8週間を休むことができ、健康保険からは給与の約2/3(※1)の金額に相当する出産手当金が支給されます。

 産休が終了した後の休業が育児休業です。会社員などで雇用保険に加入している人は、原則1歳未満の子を養育するために育児休業を取得した場合に、育児休業給付金の対象になります。180日までは休業開始時賃金日額の67%、181日以降は50%相当額が支給されます(※2)。

 育児休業給付金を受給できる要件は以下になります。
1歳未満の子を養育するために、育児休業を取得した雇用保険の被保険者であること。
育児休業を開始した日前2年間に賃金支払基礎日数が11日以上ある(ない場合は就業した時間数が80時間以上の)月が12か月以上あること(※3)。
育児休業を開始した日から起算した1か月ごとの期間(育児休業終了時は終了日まで)の就業日数が10日以下または就業した時間数が80時間以下であること。
有期雇用の場合は、子が1歳6か月まで、1歳6か月以後も延長する場合は、1歳6か月の休業開始時において2歳までの間に労働契約が満了することが明らかでないこと。
延長手続きの変更は2025年4月から
 育児休業給付金の支給期間の原則は、子供が1歳になるまでですが、特別な事情のある場合には、1歳6ヵ月までの延長が認められています。配偶者の病気や死亡などの他に、保育園に申し込んでも入れなかった場合も認められます。1歳6ヵ月になっても、これらの理由がある場合には、2歳までの延長が認められます。

 しかし、意図的に保育園に落選するように申込むケースが問題視され、手続きの方法が見直されることになりました。これまでは、保育所に当面入所できないことについては、市区町村の発行する入所保留通知書などにより確認していました。2025年4月からは、これまでの確認に加え、保育所の利用申込書の写しなどを提出し、速やかな職場復帰のための申込みであると公共職業安定所長に認められることが必要になります。

 育休中の方にとって、いつからどの保育園に預けるか、預けられるかは大変大きな問題です。公的な制度であるために、今回ご紹介したこと以外にも利用するための詳細な要件があります。勤務先にも確認しながら上手に制度を利用してください。
※1:
平均標準報酬月額の1/30相当額の2/3。
※2:
休業開始時賃金日額×支給日数(原30日)の80%以上の賃金が支払われている場合は、育児休業給付金の支給額は、0円。80%未満でも、支払われた賃金額に応じて、支給額が減額される場合があります。
※3:
第1子の育児休業や本人の疾病等による休業期間がある場合などには、この要件を満たさなくても対象になる場合があります。
参考:
森田 和子(もりた・かずこ)
FPオフィス・モリタ 代表
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者、DCA(確定拠出年金アドバイザー)

大学卒業後、コンピュータソフト会社、生命保険会社勤務を経て、1999年独立。保険や投資信託の販売をしない独立系のファイナンシャル・プランナー事務所としてコンサルティングを行っている。
お金の管理は「楽に、楽しく」、相談される方を「追い詰めない」のがモットー。情報サイト・新聞・雑誌への執筆多数。企業・学校・イベントで行うマネープランセミナー・講演も好評。

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