政府、2025年度に初めてPBが黒字に転換との試算

浅野 宗玄
2024.08.19

1月に示された試算値から上方修正
 政府は7月29日、経済財政諮問会議において、中長期の経済財政に関する試算を示し、財政健全化の指標として重視する国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)が、政府が目標とする2025年度に初めて8,000億円程度の黒字に転換するとの試算を明らかにした。企業の好業績や物価高を背景に税収が増えることに加え、大規模経済対策が一巡して歳出改革が進み、収支が改善されると見込んでいる。

 今年1月に示された試算では、2025年度のPBは、ベースラインで4.5兆円の赤字、より高い成長率が前提の成長実現ケースでも3.0兆円の赤字だった。だが、2023年度の実績見込み31.9兆円の赤字が、2024年度に19.7兆円の赤字となり、その試算値が今回上方修正されて、2025年度については、黒字額が名目GDPの+0.1%程度に相当する8,000億円程度となるとの試算が示された。
2033年度までPB黒字化が続くと予測
 試算は、経済の中長期的な展望として、TFP(全要素生産性:資本と労働の増加によらない付加価値の増加を表す)上昇率が直近の景気循環の平均並みで将来にわたって推移する想定の「過去投影ケース」とTFP上昇率が過去40年平均程度まで高まる想定の「成長移行ケース」、TFP上昇率がデフレ状況に入る前の期間の平均程度まで高まる想定の「高成長実現ケース」の3つのケースを示した。

 「成長移行ケース」は、TFP上昇率が過去40年平均の1.1%程度まで高まり、2030年代以降も実質1%を安定的に上回る成長を確保。「過去投影ケース」は、TFP上昇率が直近の景気循環の平均並み(0.5%程度)で将来にわたって推移するシナリオで、中長期的に実質0%台半ば、名目0%台後半の成長にとどまる。2025年度は歳出効率化による一定の効果も織り込み、どちらも今回試算した2033年度までPB黒字化が続くと予測した。
「高成長実現ケース」では更に改善
 国・地方のPB対GDP比をみると、2023年度決算概要における不用、繰越、税収増等を反映して、累次の経済対策にかかる歳出の大宗は2024年度までに執行されるため、2024~25年度にかけてPBが大幅に改善する。民需主導の堅調な成長が続くなか、一定の前提の下で、2025年度のPBは黒字化する姿となる。その後、成長移行ケースでは黒字幅が拡大する一方、過去投影ケースでは次第に縮小する見通しだ。

 また、国・地方の公債等残高対GDP比をみると、成長移行ケースではPBが黒字化する中で徐々に低下するが、過去投影ケースでは試算期間後半に上昇に転じる。
 なお、TFP上昇率がデフレ状況に入る前の期間の平均1.4%程度まで高まるシナリオで、成長移行ケースよりも更に高い成長となる「高成長実現ケース」では、PB対GDP比や公債等残高対GDP比が、成長移行ケースに比べて、更に改善する姿となるとしている。
参考:
浅野 宗玄(あさの・むねはる)
株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト

1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に『住基ネットとプライバシー問題』(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍『生命保険法人契約を考える』
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.php

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