「商品の比較」から「顧客理解」へ
-金融庁・白藤氏が示唆した比較推奨販売の本質-

加藤 悠
2026.03.16

比較推奨販売をめぐる現場の戸惑い
 2026年2月25日に開催されたイベント「ITC Agents Japan 2026」では、金融庁監督局保険課保険代理店監督企画室長の白藤文祐氏による基調講演が行われ、多くの保険代理店が頭を悩ませている「比較推奨販売」のあり方について、非常に示唆に富む話がありました。今回は、その中でも印象に残った点をご紹介します。
 なお、本稿は筆者の参加・聴講に基づく要約および所感であり、主催者・登壇者の公式見解をそのまま示すものではありません。

 6月に施行される改正保険業法を前に、新たなルールに基づく比較推奨販売をどのように実務へ落とし込むべきか、現場では戸惑いの声も少なくないようです。
 どの商品の、どのスペックを、どう比較して提示すれば要件を満たせるのか。そうした観点から、いわばマニュアル的な対応に意識が向きがちになるかもしれません。
起点は「顧客理解」
 しかし同氏は、全国の保険代理店を回る中で耳にした現場の声を踏まえた上で、講演では、「比較推奨販売の出発点は、単なる商品の比較ではない」という趣旨のコメントを示されていました。さらに、「重要なことは、まずは顧客の希望をきちんと聞き、その上で顧客の理解を深めてから提案につなげていく姿勢である」という趣旨のコメントも残されていました。
 つまり、真に価値のある比較推奨とは、「複数の設計書を並べて違いを説明することではなく、目の前の顧客がどのようなビジネスをし、どのようなリスクを抱え、何を必要としているのかを深く掘り下げることにある」ということなのだと解釈しました。
保険代理店に求められる本来の役割
 実際、同氏が評価する「頑張っている保険代理店」は、たとえば法人のお客様に対しては、「単に保険を売ることを第一とするのではなく、まず、その企業の業務内容をよく調べ、顧客ごとに異なるリスクを自ら考えている」とのことでした。また経営者に対して、リスクマネジメントの重要性や自社が直面しているリスクへの気づきを促すことも保険代理店の重要な役割であり、「契約の獲得は、その活動の成果(果実)である」という趣旨のコメントも残されていました。
 保険ありきで話を進めるのではなく、顧客のビジネスや生活に潜むリスクをともに洗い出し、リスクマネジメントを支援する。そして、その結果として真に必要な保険商品が自然と導き出される。これこそが、比較推奨販売のあるべき姿と言えるのでしょう。
改正保険業法対応の先にあるもの
 「保険というものは、真に必要な者へ販売されて初めて世の中の役に立つ」。
 同氏のこの言葉は、特に印象に残っているのですが、保険という目に見えない商品を扱う保険業界に対する、重く、そして温かいエールであると感じました。ルールの表面的な遵守にとらわれるのではなく、顧客の真のニーズと向き合うこと。それこそが、情報格差を乗り越え、地域や顧客から選ばれ続ける保険代理店の条件となるはずです。

 なお、当社では、改正保険業法に対して「何から着手すべきか」「どのような手順で社内対応を進めるべきか」に焦点を当てた「2026年施行 保険業法改正0.5」を業界に先駆けて発刊しています。ぜひお手に取っていただき、同書を起点として改正法対応の第一歩を踏み出していただければ幸いです。
参考:
(セールス手帖社 加藤 悠)

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