会社が納付期限までに社会保険料等を納付しないとどうなる?

庄司 英尚
2024.09.02

社会保険料の納付は特段の理由がない限り口座振替を利用すべき
 社会保険(※)に加入している会社は、社会保険の厚生年金保険料と健康保険料・介護保険料(協会けんぽ加入企業のみ)、子ども・子育て拠出金(厚生年金保険料と合わせて納める税金)について、所定の額を納付期限となる翌月末日までに支払わなければならない。
ここでは日本年金機構へ納付する狭義の社会保険を取り上げ、労働保険は割愛する。
 社会保険料の支払いについては通常は口座振替にしている会社が多いが、規模のさほど大きくない会社は金融機関窓口にて納入告知書により納付しているところもある。今回はその社会保険料を、もしも会社が納付期限までに支払わなかった場合どうなるのか、日本年金機構の案内を参考に紹介する。
年金事務所からの連絡を無視せず、来所命令には従うこと
 社会保険料は、会社と社員が原則として折半で負担することになっている。会社が日本年金機構に社会保険料を納付する際には、従業員の給与から控除した社会保険料額と合わせて会社が全額支払うことになっている。資金繰りの関係で納付できない会社もあれば、単純に納付を忘れているだけの会社もあるが、いずれにしても期限までに納付されないと、年金事務所は事業所への架電や文書による来所を求め、事業所を訪問し、行政指導として自主納付を促す行為である納付督励を行う。

 厚生年金保険料等を納付期限までに納めない事業所に対して年金事務所は、さらに督促状を送付し、電話などによる納付督励も繰り返し行っていく。例えば督促状の期限までに納付が難しいときは自ら進んで年金事務所に出向き、経営状況の実態がわかる資料等を持参して窮状を説明し、返済計画について相談することが望ましい。
財産を差押さえられたら、再起不能になる可能性もある
 督促状で指定した期限までに完納されない場合、延滞金が発生することになる(一括納付によって事業継続が困難になるなど要件に該当する場合は、保険料の分割納付も可能)。延滞金の対象となる期間は、滞納した保険料の納付期限の翌日から実際に納付した日の前日までの期間となっている。

 年金事務所の督励により来所命令や分割納付の計画に従わない場合、または完納の見込みが立たない場合は滞納処分に移行することになる。滞納処分は、事業主への直接ヒアリングだけでなく、強制力をもった独自の財産調査を行うこともある。取引先金融機関に預金残高の確認を行うほか、必要に応じ、取引先企業全般に対し売掛金等の債権の有無を調査する。また、滞納事業所の不動産等、財産全般についても調査を行い、これにより把握した不動産、預金、売掛金債権等について、必要に応じ差押えを行い、差押えた財産を換価し、滞納した社会保険料や延滞金に充当することになる。

 滞納処分を受けると売掛金債権も差押さえられるので、その後の取引にも影響が出て、取引先からの信用がなくなり、最悪、取引停止の恐れもある。金融機関にある預金口座の残高も差押さえられ、今後の融資にも影響が出る。最悪、不動産の所有権もなくなってしまうと事業活動すらできなくなってしまう。滞納処分にいたるまでの流れについてはよく理解しておき、このような事態に陥らぬよう誠実かつ迅速な対応がベストであることを頭に入れておいてほしい。
参照:
庄司 英尚(しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所(現・アイウェーブ社労士事務所)を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/

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