テーマ別研修で実施率トップは「ハラスメント」

庄司 英尚
2024.09.30

ほとんどの企業が階層別研修を実施している
 人事に関わる情報サービスを提供する一般財団法人労務行政研究所は、企業における人材育成施策や教育研修の実施状況について、2024年5~6月にWebでアンケート調査をし、回答のあった271社の集計結果をまとめて8月に発表した。

 調査によると、最も実施されているのは階層別研修(96.6%)で、次いで職種別・部門別研修とテーマ別研修がともに59.5%で並び、以下は選抜型研修(52.6%)、選択型研修(42.2%)が続く。

 階層別研修の実施状況を対象別に見てみると(複数回答)、新入社員研修(97.7%)が最も多く、新任管理職研修も約9割(89.7%)の企業が実施している。中堅・リーダー社員研修とフォローアップ研修も実施率は8割近い。
テーマ別では、ハラスメントとコンプライアンス関連が上位を占める
 テーマ別研修とは、特定の分野にテーマを絞って行うもので、2020年以降に実施したテーマ(複数回答)のうち実施率が最も高いのは、「ハラスメント」の81.8%だった。これは改正労働施策総合推進法によって大企業のみならず中小企業もパワーハラスメントを含むハラスメント対策が義務化されたことが背景にあるのだろう。

 実施率2番目は「コンプライアンス」(78.0%)、3番目は「メンタルヘルス」(47.7%)であった。テーマ別研修を実施する企業の4分の3以上が、この数年でハラスメント対策を含むコンプライアンス領域の研修を行っていることが明らかとなった。
経営幹部人材と管理職候補者を育成する研修は規模による格差が大きい
 将来の経営を担う「経営幹部人材」と「管理職候補者」を育成するための教育・研修等の実施率を見ると、経営幹部育成は38.5%、管理職候補育成は46.5%であった。これを企業規模別に見ると、1000人以上では経営幹部、管理職候補ともに60.3%、300人未満では経営幹部が22.8%、管理職候補が36.4%となっており、規模による格差が大きいことが明らかになった。

 このような教育研修状況の結果を参考にして、自社がどの位置づけにあり、同規模の他社と比較してどうなのかを冷静に受け止めて、今後の研修計画を立ててみるのもよいのではないだろうか。
参照:
庄司 英尚(しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所(現・アイウェーブ社労士事務所)を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/

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