えっ?火災保険で自宅の省エネ化費用まで出るの?

水谷 力
2024.09.30

住宅の省エネ基準の適合義務化
 2025年、建築基準法や「建築物省エネ法(建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律)」の改正により、住宅の省エネ基準の適合義務化など建築のルールが大きく変わります。2025年4月以降に着工する全ての建築物に「省エネ基準」への適合が義務付けられ、一般住宅も含めて全ての建築物で「省エネ適合判定」が必要となります。省エネ基準の適合には「断熱等性能等級4以上」「一次エネルギー消費量等級4以上」などを充足する必要があります。その結果、建物の省エネ性能に対しての評価と厳正な審査が全物件で実施され、一定の基準に達しない建物は建築することができなくなります。
法改正の背景
 2050年カーボンニュートラル(気候変動の原因となっている温室効果ガスの排出を実質ゼロとすること)、2030年度温室効果ガス46%排出削減(2013年度比)の実現に向け、2021年10月、地球温暖化対策等の削減目標を強化することが決定されました。これをうけて、我が国のエネルギー消費量の約3割を占める建築物分野における取組みが急務となっています。

 また、温室効果ガスの吸収源対策の強化を図る上でも、我が国の木材需要の約4割を占める建築物分野における取組が求められているところです。

 このため、今般、建築物の省エネ性能の一層の向上を図る対策の抜本的な強化や、建築物分野における木材利用の更なる促進に資する規制の合理化などを講じるものです。
保険業界での動き
 ところで、火災保険の保険金は一般に再調達価額で算定されます(再調達価額とは、損害が発生した時の発生した場所における保険の対象と同一の構造、質、用途、規模、型、能力のものを再築、または再取得するのに必要な金額)。そうすると、2025年4月以降に全焼・全壊して再築等を行う場合、従来の火災保険の保険金のみでは、この省エネ基準適合のための建築費用をまかなうことができず、追加費用が必要になる可能性があります。つまり、従来の保険金のみでは、建物が元どおりには建てられなくなるかもしれないということです。

 そこで、この問題を解決するために開発されたのが、「建物省エネ化費用特約」(名称や取り扱いの有無は保険会社によって異なる)です。2024年10月からの発売ですが、この特約では、建物の損害に対して損害保険金が支払われ、その損害が「全焼・全壊」に該当した場合に、保険の対象である建物を「省エネ基準適合建物」に建てかえ、買いかえ等を行う費用として、建物保険金額に10%を乗じた額(1回の事故につき、1敷地内ごと100万円限度)が支払われます。

 今後、自宅等の火災保険を契約する際は是非検討しておきたい特約です。
【参考情報】
生命保険の募集人の方は、上記のような損害保険の話から生命保険の話につなげることも可能です(詳しくは以下の書籍が参考になります)。火災保険の話題からのアプローチトークも収録されています(第2章第6話落雷で給湯器やエアコンが壊れた!「建物」じゃなくても火災保険の対象になるの?など)。
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水谷 力(みずたに・ちから)
株式会社セールス手帖社保険FPS研究所
社会保険労務士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
組織開発コンサルタント

大手保険会社在職中にFP資格やコーチング資格等を取得。現在は各種執筆活動などをおこなっている。著書には、「違いを生み出すファーストアプローチ」「違いを生み出す生損保リスクチェック」(いずれもセールス手帖社保険FPS研究所)がある。

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