給与のデジタル払いがスタート

高橋 浩史
2024.10.03

 キャッシュレス決済の推進と送金手段の多様化に対応するため、賃金のデジタル払いが始まります。今後の給与支払いシステムにおいて注目されるものです。
PayPayが厚労省から認可を得る
 2024年8月、厚生労働省はQR決済で知られるPayPay株式会社を「指定資金移動業者」として指定しました。2023年4月の給与のデジタル払い解禁後、PayPayは初めて認定される事業者です。

 給与の支払いは、原則として通貨(現金)で支払うことが労働基準法で定められていますが、従業員の同意が得られれば、金融機関の口座への振込も可能です。今回、スマホの決済アプリなどに入金するデジタル払いも可能となり、給与受取の新たな選択肢となりました。

 給与をデジタル払いにするには、事前に労使協定の締結が必要です。また、PayPayではデジタル払いを希望する事業者や従業員に向けて専用のウェブサイトも開設しており、「PayPay給与受取」として、2024年中のサービス開始が予定されています。
デジタル払いのメリット・デメリットは
 給与のデジタル払いの一番のメリットは、給与口座からの現金引き出しやチャージが不要で、決済アプリからそのまま支払いに使えることでしょう。

 一方で、家計管理の面から見ると、直接決済アプリへ入金されることから使いすぎの可能性や、不正利用などのセキュリティ上の懸念もないわけではありません。事業者側にとっても、給与支払いの運用が煩雑になる可能性もあります。

 なお、PayPay給与受取では、PayPayの破綻に備えて、第三者保証機関(三井住友海上火災保険株式会社)による保証も提供されています。

 現状では、指定資金移動業者の指定を受けているのはPayPayのみですから、給与のデジタル払いがどこまで浸透するのかは見通せません。とはいえ、従業員にとっては新たな給与受取方法として、事業者にとってもさまざまな人材確保に繋がる可能性のあるサービスです。今後の指定資金移動業者の指定も含めて、展開が注目されるところです。
高橋 浩史(たかはし・ひろし)
FPライフレックス 代表
日本ファイナンシャルプランナーズ協会CFP®
1級ファイナンシャル・プランニング技能士

東京都出身。デザイン会社などでグラフィックデザイナーとして20年活動。 その後、出版社で編集者として在職中にファイナンシャル・プランナー資格を取得。2011年独立系FP事務所FPライフレックス開業。 住宅や保険など一生涯で高額な買い物時に、お金で失敗しないための資金計画や保障選びのコンサルタントとして活動中。 その他、金融機関や出版社でのセミナー講師、書籍や雑誌での執筆業務も行う。
ホームページ http://www.fpliflex.com
ブログ http://ameblo.jp/kuntafp/

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