夫婦の年金~年金分割~

三角 桂子
2024.10.17

 厚生労働省の「令和4年(2022)人口動態統計(確定数)の概況」によると婚姻件数は50万4930組、離婚件数は17万9099組となっています。約3組に1組が離婚するなか、今回は年金分割についてご説明します。
年金分割とは
 年金分割は夫婦が婚姻期間中に納めた厚生年金の保険料納付記録を2人で築いた共有財産として離婚時に分割し、それぞれに分け合う制度のことをいいます。年金分割には、「3号分割」と「合意分割」があります。

 3号分割は、平成20年5月1日以後に離婚等をし、要件を満たしている場合、国民年金の第3号被保険者であった人からの請求により、平成20年4月1日以後の婚姻期間中の3号被保険者期間における相手方の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を2分の1ずつ、当事者間で分割することができる制度です。

 3号分割は当然に分割することができますが、制度ができる前の3号期間がある場合は、2人の合意が必要になるため、平成20年4月1日よりも前の期間部分については、以下の合意分割を行う必要があります。

 その合意分割ですが、こちらは平成19年4月1日以後に離婚等をし、要件を満たしていた場合、婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)の按分割合を決め、当事者間で分割することができる制度です。
年金分割の注意点
 年金分割する際にはいくつか注意点があります。分割請求の期限は、原則として離婚した日の翌日から起算して2年以内です。2年を過ぎてしまうと、原則として分割はできませんので、忘れずに2年以内に請求しましょう。

 特例として、例えば離婚から2年を経過するまでに審判申立等を行って、本来の請求期限が経過後、または本来請求期限経過日前の6カ月以内に審判等が確定した場合、その日の翌日から起算して6カ月経過するまでに限り、分割請求することができます。

 分割手続き前にどちらかが亡くなった場合、死亡日から1カ月以内に限り、分割請求が認められています。ただし、分割のための合意または裁判手続きによる按分割合の決定が必要になるため、年金分割の割合を明らかにすることができる書類の提出が必要です。

 実際の年金分割は、2人(それぞれ代理人可)がそろって、年金事務所に直接、合意書を持参していただく必要があります。もしくは公正証書や和解調書等を持参すれば、1人で手続きできます。また3号分割のみ請求する場合は、お互いの合意は必要ないため、第3号被保険者であった人が1人で手続きすることができます。

 年金分割は厚生年金部分の分割です。お互いが国民年金のみの期間については、分割できません。
共働きの年金分割
 3号分割は、配偶者の扶養になっていた期間(国民年金第3号被保険者の期間)であるため、共働き世帯が増えている現在では、3号分割は減少する傾向にあるかもしれません。もうひとつの合意分割により、お互いの厚生年金を按分する決め方が多くなることが想定されます。

 いままでは男性の厚生年金期間が長く、報酬も高い傾向でしたが、女性の社会進出、働き方の多様性等により、男女が逆転しているケースも増えています。按分割合が気になる人、調停等で必要な人は、分割する前に情報提供を請求することができます。
参考:
三角 桂子(みすみ・けいこ)
社会保険労務士法人エニシアFP 代表社員
FP・社会保険労務士

大学卒業後、公務員、専業主婦、自営業、会社員、シングルとあらゆる立場を経験し、FPと社会保険労務士として開業し、5年目に法人化(共同代表)。
FPと社会保険労務士の二刀流を強みに、法人・個人の労務、年金の相談業務やセミナー、執筆など、幅広く行っている。
常に自身の経験を活かし、丁寧な対応を心がけ、生涯現役に向かって邁進中。
法人名はご縁(えにし)に感謝(ありがとう)が由来。

公式サイト https://sr-enishiafp.com/

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