36協定の認知度、働き方改革以前より低下

庄司 英尚
2024.10.21

働き方改革から5年経つが36協定の周知は不十分
 日本労働組合総連合会(略称:連合)は、働き方改革関連法が2019年4月に施行されてから5年が経過したことを受け、同法の定着状況や効果についてどのように労働者が実感しているかを調査した。この調査は、インターネットリサーチを使い、15歳以上の正社員・正職員、契約社員・嘱託社員、派遣社員の形態で働く人1,000名の有効サンプルを集計している。

 会社が労働者に残業を命じるためには、あらかじめ労働者の過半数が加入する労働組合(ない場合は労働者の過半数を代表する者)との間で労使協定(いわゆる36協定)を締結する必要があることを知っているかという質問に対し、「知っている」は49.2%、「知らない」は50.8%となった。同じ設問で過去の結果をみると、「知っている」は2017年調査で56.1%、2019年調査で55.3%だったので、36協定の認知度は働き方改革以前より低下していることが判明した。これは大きな問題であり、早急な対応が求められる。
時間外労働(残業)の上限規制ルール、3割超が知らない
 働き方改革関連法で定められた「時間外労働(残業)の上限規制」のルールに関して、「内容も含めて知っている」が37.3%、「内容について少し知っている」が31.6%となり、それらを合計した68.9%を時間外労働(残業)の上限規制の「理解率」としている。その一方で、「聞いたことはあるが、内容は知らない」が19.4%、「聞いたこともない・知らない」が11.7%と、3割超の人が時間外労働(残業)の上限規制の内容を知らないという実態が浮き彫りになった。

 時間外労働(残業)の上限規制の「理解率(計)」を、世代別にみると50代(73.9%)が最も高く、労働組合の有無でみると勤め先に労働組合がある人は82.6%に対し、勤め先に労働組合がない人は64.8%と17.8ポイントも差があり、組合の有無による影響がはっきりとあらわれた。
残業時間が多い業種は「教育、学習支援業」「運輸業、郵便業」「建設業」
 労働時間の管理について、職場では労働時間(残業時間含む)が管理されているか聞いたところ、「管理されている」は86.6%、「管理されていない」は13.4%となった。業種別にみると、「管理されていない」と回答した人の割合は、「教育、学習支援業」(23.8%)と「公務](23.2%)で2割を超えた。

 職場で労働時間が管理されている人に、どのように労働時間(残業時間含む)が管理されているか聞いたところ、「勤怠管理システム等をつかって自動申告/自己申告する」(40.8%)が最も高く、「タイムレコーダーで管理する」(23.7%)、「ICカードで管理する」(12.8%)、「パソコンの使用時間(ログイン・ログオフ時間)で管理する」(12.7%)、「上司が直接確認して管理する」(9.2%)と続いた。

 全回答者に、1か月あたりの平均的残業時間を聞いたところ平均は17.7時間で、最も多いのは「10時間未満」(50.4%)。次いで「10時間~20時間未満」(17.5%)、「20時間~30時間未満」(13.0%)と続く。業種別にみると、「教育、学習支援業」(30.4時間)が最も長く、次いで「運輸業、郵便業」(23.5時間)、「建設業」(20.1時間)と続いた。

 連合では本調査全体に関するコメントとして、「本調査で明らかとなった『働き方改革』の課題を踏まえれば、労働時間ルールについては、緩和ではなく、誰もが安心・安全に働くことができるように労働者保護の観点からの見直しが必要です」と述べており、今後のルール改正には、このような調査の影響が少なからずあるのではないだろうか。
参照:
庄司 英尚(しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所(現・アイウェーブ社労士事務所)を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/

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