賃上げ促進税制の繰越控除を受ける際の留意点

木下 洋子
2024.11.07

 中小企業庁は9月20日に、「中小企業向け賃上げ促進税制ご利用ガイドブック」の更新版を公表した。更新版には、令和6年度税制改正において新設された繰越控除措置の適用にあたっての留意点が記載されている。
賃上げを実施した年度に控除しきれなかった金額の繰り越しが可能に
 中小企業向け賃上げ促進税制は、中小企業者等が、前年度より給与等支給額を増加させた場合に、その増加額の一部を法人税から税額控除できる制度である。

 令和6年度税制改正において、要件を満たす賃上げを実施した年度に控除しきれなかった金額について、翌年度以降に5年間繰り越しが可能となった(繰越控除措置)。

 新制度の適用期間は令和6年4月1日から同9年3月31日までの間に開始する事業年度が対象となる。
※1
未控除額を翌年度以降に繰り越す場合には、未控除が発生した事業年度以後の各事業年度の確定申告書に繰越税額控除限度額の明細書の添付が必ず必要。
※2
繰越税額控除を受けようとする事業年度において、雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額より増加している場合に限り、適用可能。
※3
繰越税額控除を受けようとする事業年度においては、青色申告書を提出する必要があるが、中小企業者等に該当しない場合でも適用可能。
出典:
前年度より雇用者給与等支給額が増加していない場合は繰越控除できず
 繰越控除措置を適用する場合には、①未控除額が発生した事業年度以後の各事業年度の確定申告書に繰越税額控除限度超過額の明細書及び ②繰越税額控除措置の適用を受けようとする事業年度の確定申告書等に繰越控除を受ける金額を記載するとともに、その金額の計算に関する明細書を添付して、提出する必要がある。

 上図の事例のように、令和7年度、8年度が赤字で繰越控除措置の適用を受けない場合でも、各年度の確定申告において①の明細書が提出されていない場合には、未控除額は繰り越されず、繰越税額控除を適用できないので注意が必要である。

 未控除額を翌年度以降に繰り越す際には、繰り越した額を実際に税額控除する事業年度において、全雇用者の給与等支給額が前年度より増加していることが要件となる。ただし、実際に税額控除する事業年度において、前事業年度における雇用者給与等支給額が零である場合は、適用不可となる。
木下 洋子(きのした・ひろこ)
マネーコンシェルジュ税理士法人

群馬県出身。大学卒業後、会計事務所勤務を経て現法人へ。法人成り支援や節税対策・赤字対策など、中小企業経営者の参謀役を目指し、活動中。年に数回の小冊子発行など、事務所全体で執筆活動にも力を入れている。趣味はピアノを弾くこと。

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