“資産形成と保障”を顧客にどう提案するか

高橋 浩史
2025.10.02

 長寿化や物価上昇を背景に、将来に備えた「資産形成」の重要性が高まっています。一方で、病気や就業不能など、予期せぬリスクへの備えも欠かせません。

 NISAやiDeCoなどを利用した資産運用と、生命保険・医療保険などの保障は、役割は異なりますが、人生を支える二本柱といえます。あらためて、その使い分けを整理してみます。
投資初心者にはNISA、老後資金にはiDeCo
 NISAとiDeCoはいずれも長期・積立・分散投資に適した運用制度ですが、性格は少し異なります。NISAは運用益が非課税となるメリットとともに、いつでも換金できる柔軟性があります。そのため、住宅ローンの繰り上げ返済やリフォームなど、中長期的な資金ニーズにも幅広く対応できます。

 iDeCoは60歳までは原則として換金できないため、流動性の点ではNISAには及びません。しかし、掛金が全額所得控除となるうえ、運用益の非課税や受取時の控除もあることから、節税しながら老後資金を積み立てるのに最適です。

 このような制度の違いを正しく理解し、顧客の資金作りの目的や投資経験などに応じた設計に活かすことが重要です。

 例えば、資産形成の目的が漠然としている人や、投資は初めてという人であれば、まずは少額でつみたてNISAを始めることが第一歩です。また、「老後資金を確実に確保したい」という顧客には、iDeCoを軸に、流動性の観点からNISAも並行利用するよう提案できます。
保険は「守る力」で資産形成を支える
 一方、生命保険や医療保険の基本的な役割は、経済的なリスクから生活や資産を守ることです。万一のときや、長期療養で収入が減少した場合に、生活の質を落とさないための「防波堤」といえるでしょう。

 30〜40歳代の子育て期であれば、家計を支える稼ぎ手に万一のことがあった場合に備え、生命保険が重要な役割を担います。またこの時期は、就業不能リスクに備えた保障のニーズも高まります。50歳代以降であれば、準備した老後資金の取り崩しを防ぐために、医療・介護保障がより重要になります。

 また、資産形成が途上の若年層では、資産の保全を意識した保障を検討する必要があります。そのうえで、家族構成や収入の変化といったライフステージに応じた保障の定期的な見直しが不可欠です。

 このように、保険は「もしもの時」の資産の減少を最小限に抑え、ライフプランを実現できるようにすることが大切な役割です。

 もちろん、保険にも貯蓄性のある商品はあります。しかし、NISAやiDeCoで「将来に備える資産」を育てつつ、保険で「予期せぬリスク」に備える――この2つの重要性を伝えることが、顧客本位の提案の基本であり、安心して将来設計を描くための土台となります。
高橋 浩史(たかはし・ひろし)
FPライフレックス 代表
日本ファイナンシャルプランナーズ協会CFP®
1級ファイナンシャル・プランニング技能士

東京都出身。デザイン会社などでグラフィックデザイナーとして20年活動。 その後、出版社で編集者として在職中にファイナンシャル・プランナー資格を取得。2011年独立系FP事務所FPライフレックス開業。 住宅や保険など一生涯で高額な買い物時に、お金で失敗しないための資金計画や保障選びのコンサルタントとして活動中。 その他、金融機関や出版社でのセミナー講師、書籍や雑誌での執筆業務も行う。
ホームページ http://www.fpliflex.com
ブログ http://ameblo.jp/kuntafp/

▲ PAGE TOP