「老老相続」を経済の活性化と円満相続へ
2024.11.18
相続人の半数以上が60歳以上という「老老相続」
内閣府の分析によれば、遺産を受け継ぐ相続人の半数以上が60歳以上であることがわかった。
相続による財産の引継ぎは高齢者間で行う「老老相続」である。
かつて日本人の平均寿命が現在よりも短かった頃は、親からの相続財産は、最もお金が必要となる30~40代に受け継がれ、お金がうまく循環していた。
その後、年々日本人の平均寿命は延び、相続が開始される年齢が高くなった。そのため、高齢者に資産が滞留してしまい、たくさんのお金を必要とする30~40代の人に渡らなくなってしまった。
相続による財産の引継ぎは高齢者間で行う「老老相続」である。
かつて日本人の平均寿命が現在よりも短かった頃は、親からの相続財産は、最もお金が必要となる30~40代に受け継がれ、お金がうまく循環していた。
その後、年々日本人の平均寿命は延び、相続が開始される年齢が高くなった。そのため、高齢者に資産が滞留してしまい、たくさんのお金を必要とする30~40代の人に渡らなくなってしまった。
平均寿命の延びが高齢者の貯蓄を増やす
このデータを見ると、貯蓄額は年齢の経過とともに増加し、逆に負債額は年齢の経過とともに減少し、貯蓄額においては、高齢者と若い世代ではかなりの開きがあることがわかる。高齢者には、お金を蓄えておかなければならない理由がある。
平均寿命が延び、より長く生きることができるようになったので、自分が生きていくためのお金を蓄えておく必要が出てきた。公的年金だけでは不十分ではないかと不安を感じ、年齢の経過とともに医療費がかかってくることも心配である。身体の自由がきかなくなったときに、子どもたちは本当に自分の面倒を見てくれるのか。高齢者がお金のことをあまり気にせずに暮らすためには、現在の社会保障制度では不安が残る。深刻な少子化という現状を考えると、社会保障制度が納得のいくレベルまで改善されることは考え難い。
とすれば、自分のことは自分で守らなければならず、生きていくために必要なお金を持っておきたいと考える高齢者が多いのも当然である。
平均寿命が延び、より長く生きることができるようになったので、自分が生きていくためのお金を蓄えておく必要が出てきた。公的年金だけでは不十分ではないかと不安を感じ、年齢の経過とともに医療費がかかってくることも心配である。身体の自由がきかなくなったときに、子どもたちは本当に自分の面倒を見てくれるのか。高齢者がお金のことをあまり気にせずに暮らすためには、現在の社会保障制度では不安が残る。深刻な少子化という現状を考えると、社会保障制度が納得のいくレベルまで改善されることは考え難い。
とすれば、自分のことは自分で守らなければならず、生きていくために必要なお金を持っておきたいと考える高齢者が多いのも当然である。
生前贈与の活用を検討
一方で、高齢者に滞留しているお金を若い世代に移し、お金を循環させて経済を活性化させるためには、生前贈与が王道であろう。生前贈与は相続対策にも効果を発揮する。税制上の優遇策も設けられているので、ぜひ生前贈与の活用も検討すべきである。
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住宅取得等資金の贈与税の特例(2026年12月末まで)
18歳以上の子や孫に住宅資金を援助する場合、一定額までは非課税
18歳以上の子や孫に住宅資金を援助する場合、一定額までは非課税
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教育資金の一括贈与(2026年3月末まで)
30歳未満の子や孫に教育資金を援助する場合、一定額までが非課税
30歳未満の子や孫に教育資金を援助する場合、一定額までが非課税
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結婚・子育て資金の一括贈与(2025年3月末まで)
18歳以上50歳未満の子や孫に、結婚・子育て資金を援助する場合、一定額までは非課税
18歳以上50歳未満の子や孫に、結婚・子育て資金を援助する場合、一定額までは非課税
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相続時精算課税制度
生前に財産を推定相続人等に贈与し(贈与した財産の合計額のうち累計2,500万円までは贈与税が課税されず、超過した分には20%の贈与税が課税)、実際の相続が発生した時に、生前贈与した分を含めて相続税を計算して精算する制度
生前に財産を推定相続人等に贈与し(贈与した財産の合計額のうち累計2,500万円までは贈与税が課税されず、超過した分には20%の贈与税が課税)、実際の相続が発生した時に、生前贈与した分を含めて相続税を計算して精算する制度
なお、2024年1月1日以降の贈与からは、相続時精算課税制度を利用した場合に、累計2,500万円の控除とは別に年間110万円の基礎控除が認められるようになり、利用しやすくなった。
円満な相続につなげるための家族会議の実施を
「老老相続」ではお金が高齢者間で滞留してしまい、最もお金を必要としている30~40代に行き渡らない。親としては、困っている子どもを援助したいという想いは当然持っている。ただ、子どもが必ず自分の老後の面倒を見てくれるとは限らない。とすれば、自分のことは自分で守らなければならず、生きていくために必要なお金を持っておきたいと考えるのも当然である。そこで家族会議を実施して、それぞれの想いを洗い出し、着地点を見つけてはどうだろうか?
相続はいつか必ず誰にでも起きる。
にもかかわらず親子間で相続の話をする機会はなかなか作れない。円満な相続を迎えるためにも、実際の相続が起きる前に、家族会議により家族間のコミュニケーションをとっておくことが必要不可欠だと考えられる。
相続はいつか必ず誰にでも起きる。
にもかかわらず親子間で相続の話をする機会はなかなか作れない。円満な相続を迎えるためにも、実際の相続が起きる前に、家族会議により家族間のコミュニケーションをとっておくことが必要不可欠だと考えられる。
西海 重尚(にしうみ・しげひさ)
西海FP事務所 代表
CFP®認定者、1級 ファイナンシャル・プランニング技能士、公的保険アドバイザー、終活アドバイザーなどの資格を保有。
慶應義塾大学 経済学部卒。
33年間のサラリーマン生活において大手損害保険会社、生命保険会社、FP系出版社に勤務。
現在は独立系FPとなり、保険・年金・相続に強いアドバイザーとして活動中。
自己紹介用ホームページ https://fuku29390fpo.com
CFP®認定者、1級 ファイナンシャル・プランニング技能士、公的保険アドバイザー、終活アドバイザーなどの資格を保有。
慶應義塾大学 経済学部卒。
33年間のサラリーマン生活において大手損害保険会社、生命保険会社、FP系出版社に勤務。
現在は独立系FPとなり、保険・年金・相続に強いアドバイザーとして活動中。
自己紹介用ホームページ https://fuku29390fpo.com