傷病手当金の受給原因、「精神及び行動の障害」が断トツ

庄司 英尚
2024.12.09

昨年は新型コロナを含む特殊目的用コードがトップだったが…
 全国健康保険協会(協会けんぽ)は、令和5年度の現金給付受給者状況調査報告を9月5日に公開した。その中の傷病手当金の受給状況についてここに紹介する。調査対象は、令和5年10月の傷病手当金受給者全員だ。

 傷病手当金の受給の原因となった傷病別に件数の構成割合をみると、精神及び行動の障害が35.20%で最も高く、次いで新生物が13.57%、特殊目的用コード(新型コロナウイルス感染症を含む)が11.00%、筋骨格系及び結合組織の疾患が8.18%となっている。

 なお、年度別で傷病別件数の構成割合を見ると、前年の令和4年は新型コロナウイルス感染症を含む特殊目的用コードが48.62%でトップに躍り出るが、令和元年以降では令和4年を除いていずれも精神及び行動の障害が30%以上でトップを独走、年を追うごとに増加傾向を示している。
支給件数の年齢層では50~54歳がトップ
 傷病手当金は健康保険等に加入している被保険者が業務外の理由による病気やケガで休業中に被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度で、被保険者が会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられないときに支給される。連続4日以上仕事に就けなかった場合に、4日目以降に支給され、1日あたりの金額は給与の3分の2相当額を受けることができる。

 調査データによると、傷病手当金の支給件数の構成割合を年齢階級別にみると、50~54歳が12.14%で最も高く、次いで55~59歳が11.34%で2位。。男女別では、男性のほうが50歳以上のすべての階級で高くなっているのが特徴である。
中小企業はメンタル不調の従業員の対応などに苦労
 事業所の規模別に傷病手当金の支給件数の構成割合をみると、500人以上は19.30%で最も高く、次いで100~299人が19.00%、50~99人が13.44%となっている。ちなみに50人未満をみると、30~49人が9.76%、20~29人が7.67%、10~19人が10.70%、5~9人が7.30%、4人以下が5.68%であった。被保険者数が少ない小規模事業所であっても一定の割合で申請があったことがわかる。

 最近は従業員数が多くない中小企業においてもメンタルヘルスの不調で休職し、傷病手当金を受給している従業員は珍しくない。中小企業はそのような従業員の対応や傷病手当金の申請を含めた休職に関する実務などに苦労しているようだ。中小企業であっても自社の従業員がメンタル不調に陥るのを防ぐための施策の実行、そしてメンタル不調から復帰した際には再発せずに働き続けることができる環境づくりを積極的に行っていきたいところである。
参照:
庄司 英尚(しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所(現・アイウェーブ社労士事務所)を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/

▲ PAGE TOP