「スポットワーク」活用、企業の約4割が前向き

庄司 英尚
2025.01.27

スポットワークの市場は急拡大している
 空いているちょっとした時間に単発で働く「スポットワーク(スキマバイト)」という新しい働き方が広がりをみせている。スポットワーク仲介サービス業の中には上場を果たした企業もあり、同様のサービスを始める企業も相次いでおり、市場が急拡大している。

 そのような中でこのたび帝国データバンクはスポットワークを請け負う「スポットワーカー」の活用についてインターネットによる企業アンケートを実施。その調査結果(有効回答企業数1,685社)を発表した。スポットワークの活用には様々な課題もたくさんあるが、利用している企業の意見などを参考にして自社で活用を検討する際の判断材料としたい。
スポットワーク「既に活用している」企業は8.3%
 企業にとっては、必要な時に必要な人員を柔軟かつスピーディーに確保できる点がスポットワークの魅力である。企業規模に関係なくスポットワークの活用方法について気にしている企業は増えており、細かい仕組みについても興味があるところも多いようだ。

 スポットワーカーの活用に興味があるか尋ねたところ、「既に活用している」企業は8.3%、「活用を検討している」企業は5.3%、「検討はしていないが、興味はある」企業は24.5%だった。これらを合計した「活用に前向き」な企業は38.1%となった。その一方で、「興味はない」企業は49.8%となった。
活用に前向きな業界、トップは「小売」、次が「運輸・倉庫」
 「活用に前向き」な企業においては、「最低賃金の上昇に加え、新規人材の確保も容易ではないため、活用を検討している」といった声があがっており、人手不足への対応が背景にある企業が多かった。また、「働き手の空き時間を利用できるので、社会全体の生産性が上がり、良いと考える」とのコメントもあがっていた。他方で興味はあるが、リスク管理や採用ミスマッチに関する不安から活用を躊躇する様子もみられており、これらの課題をどのように解決するかは簡単ではない。慎重に行動しないと、予想外の損害につながる可能性があることも考えておかなければならない。

 スポットワーカーの「活用に前向き」な企業の割合を主な業界別でみると、トップは「小売」、次が「運輸・倉庫」だった。全体(38.1%)に対して「小売」(50.6%)は12.5ポイント、「運輸・倉庫」(46.8%)は8.7ポイントそれぞれ上回った。さらに細かい業種でみると、ガソリンスタンドなどを含む「専門商品小売」は55.2%と突出して高いことがわかった。

 帝国データバンクは調査結果のまとめとして、「企業におけるスポットワーカーの活用は、自社業務との相性の見極めが欠かせないほか、費用・時間のコストおよびリスクへの対応など解決すべき課題はありそうだが、働き方の多様化と人手不足の深刻化により、スポットワークは多くの働き手と企業の有力な選択肢として期待されよう」と記している。

 まったく活用することに興味がない企業にとってハードルは高いが、働く側の人材の質が高くなってくれば状況も少しは変わってくると思われており、活用企業の成功事例などが公表されてくればより身近になってくるのではないかと思われる。
参照:
庄司 英尚(しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所(現・アイウェーブ社労士事務所)を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/

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