市区町村長による成年後見人の選任申し立て件数が過去最多に

西海 重尚
2025.02.10

2023年は過去最多の9,607件
 後見人「首長申し立て」最多、という新聞の見出しがあった。

 最高裁判所の資料によれば、市区町村長による成年後見人の選任申し立て件数が、2023年は9,607件あり、過去最多であったという。

 そして申立総数約40,000件のうち、市区町村長によるものが23.6%で、子どもによる申立件数20.0%を逆転したという。
市区町村長による成年後見人の選任申し立てとは
 成年後見制度は、認知症により判断能力が低下した人などの財産を管理し、法的な面から日常生活を守るための制度である。

 成年後見制度には法定後見制度と任意後見制度がある。

 法定後見制度は、すでに判断能力が不十分な人のための制度であり、任意後見制度は、まだ判断能力のあるうちに、将来に判断能力が衰えたときに備えて、契約を締結する制度である。

 法定後見制度を利用するには、家庭裁判所へ制度を利用するための申立てをする必要があり、一般的には本人、配偶者、本人の4親等以内の親族が申立てを行う。

 ただし、身寄りのない人や家族・親族に頼れない場合には、市区町村長が申立てをすることができる。
根底にある問題は「少子高齢化の深刻化」「ひとり暮らしの高齢者の増加」「認知症患者の増加」「核家族化による親族関係の希薄化」
 国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、75歳以上の人口に占めるひとり暮らしの割合は、2020年には22.4%であったものが、2050年には28.9%に高まるという。

 また、令和6年版の高齢社会白書によれば、認知症の高齢者は、2022年時点で約443万人と高齢者の12.3%を占めており、2030年には約523万人に達すると予測されている。

 市区町村長による成年後見人の選任申し立て件数が過去最多になったのは、少子高齢化の深刻化、ひとり暮らしの高齢者の増加、認知症患者の増加そして核家族化による親族関係の希薄化にその原因があると考えられる。
終活支援サービスは官民の連携体制で充実を
 ひとり暮らしの高齢者は、入院や施設入居の際に必要な身元保証、財産管理、生活支援、死後の埋葬、遺品処理などに悩んでいる。

 一方で、認知症などにより判断能力が低下した高齢者に対し、民間の悪徳業者が、サービスや不動産の不当契約を強引に締結させるといった被害が相次いでいる。

 終活支援サービスに民間企業が単独で対応していくには問題が多く、限界がある。

 2025年2月1日に、終活支援サービス事業者が、業界団体の設立に向けた準備委員会を立ち上げた。

 すでに一部の地域で実施されているが、今後ますます増加していくひとり暮らしの高齢者が、安心して老後生活を送れるように、行政(自治体)と民間企業が連携し、充実した終活支援サービスの提供ができる体制を早急に構築する必要があると考えられる。
【参考】
西海 重尚(にしうみ・しげひさ)
西海FP事務所 代表
CFP®認定者、1級 ファイナンシャル・プランニング技能士、J-FLEC認定アドバイザ―、公的保険アドバイザー、終活アドバイザーなどの資格を保有。

慶應義塾大学 経済学部卒。
33年間のサラリーマン生活において大手損害保険会社、生命保険会社、日本FP協会認定教育機関に勤務。
現在は独立系FPとなり、保険・年金・相続に強いアドバイザーとして活動中。

自己紹介用ホームページ https://fuku29390fpo.com

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