大学院の授業料後払い制度について

森田 和子
2025.03.13

 教育費のご相談の中でも、特に理系志望で多いのが、大学院までの費用についてです。文部科学省の調査(※1)によると、私立大学の初年度納付金の平均額は約148万円、大学院(博士前期課程)は約113万円となっています。大学院(博士前期課程)のほうがやや負担が少ないといっても100万円を超える金額なので、大学を卒業した後の学費も保護者が負担するのか、奨学金を利用するのかは悩むところです。修士段階の大学院の授業料について、卒業後の所得に応じた「後払い」とする仕組みが創設され、2024年から先行実施されています。内容を確認していきましょう。
授業料の後払いと生活費の支援
 授業料後払い制度は、大学院修士課程(博士前期相当の課程を含む)や専門職学位課程の在学者が、在学中は授業料を納付せず、卒業後の所得等に応じて後払いできる制度です。授業料相当額の支援を含む「授業料支援金」と、在学中の生活費の支援である「生活費奨学金」の2つの支援があり、どちらも卒業後に返還します。授業料支援金は、国公立は年額最大535,800円、私立は年額最大776,000円で、原則(※2)学校に振り込まれます。生活費奨学金は、月額2万円、4万円から選択でき、奨学生本人の口座に振り込まれます。

 授業料後払い制度を利用するには、日本学生支援機構の第一種奨学金と同じ学力基準や家計基準などを満たす必要があります。
学力基準:大学並びに大学院における成績が特に優れ、将来、研究能力または高度の専門性を要する職業等に必要な高度の能力を備えて活動することができると認められる者。
家計基準:住民税情報を基に算出する申込者本人及び配偶者の貸与額算定基準額の合計が66, 400円以下(本人の年間給与収入の目安上限は299万円)。
年収300万円までは月2,000円を返還
 後払いの方法は、卒業後の所得に応じて月々の返還額が決まる所得連動返還方式となります。年収が300万円程度になるまで、割賦月額は2,000円のままで、300万円を超えると所得に応じて返還額が増えていきます。また、返還者に子どもがいると、割賦月額の計算時に追加の控除があり、返還額の負担を抑えられるようになっています。

 なお、大学院で日本学生支援機構の第一種奨学金の貸与を受けた学生のうち、貸与期間中に特に優れた業績を挙げた人には、特に優れた業績による返還免除制度の制度がありますが、授業料後払い制度は第一種奨学金と同様の扱いとなるため、これらを併用することができます。

 申込は学校(大学院など)の窓口を通して行うので、学校の募集情報に注意して申し込むようにしてください。
※1:
※2:
日本学生支援機構と契約を締結していない学校の場合は、支援対象授業料は奨学生本人の口座に振り込まれるため、支援対象授業料は授業料に直接充当されません。
参考:
森田 和子(もりた・かずこ)
FPオフィス・モリタ 代表
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者、DCA(確定拠出年金アドバイザー)

大学卒業後、コンピュータソフト会社、生命保険会社勤務を経て、1999年独立。保険や投資信託の販売をしない独立系のファイナンシャル・プランナー事務所としてコンサルティングを行っている。
お金の管理は「楽に、楽しく」、相談される方を「追い詰めない」のがモットー。情報サイト・新聞・雑誌への執筆多数。企業・学校・イベントで行うマネープランセミナー・講演も好評。

ライフプランシミュレーションとマイホーム・老後の資金計算
FPオフィス・モリタ https://fpofficemorita.com/
教育費・住宅ローン・老後のお金 マネーのブログ
おかねネット https://okane-net.com/

▲ PAGE TOP