人口動態統計からみる高齢者の事故死因

栗原 賢二
2025.03.31

 不慮の事故は突然起こるものであり、普段から十分に気をつけたい所です。死亡原因においても他の傷病と同様、加齢に伴い増加していくことは知られていますが、データから改めて確認しましょう。
令和5年に不慮の事故で亡くなった人は4万4,440人
 厚生労働省が公表している「令和5年人口動態統計」によると、令和5年に死亡した人の総数は157万6,016人でした。そのうち65歳以上が144万5,868万人と約9割を占め、加齢により死亡率が高まることを改めて示しています。

 その死因はがん、心疾患、老衰などによるものが多くを占めていますが、不慮の事故で亡くなった人も4万4,440人(うち65歳以上が3万9016人)と、決して無視できる水準ではありません。主な内訳は以下の通りです。
<不慮の事故による死亡数(令和5年・抜粋)>
総数 65~79歳 80歳以上
交通事故 3,573 1,084 1,032
転倒・転落・墜落 11,784 1,781 9,277
不慮の溺死および溺水 8,993 3,110 5,160
その他の不慮の窒息 8,644 2,038 5,741
自然の力への曝露 3,029 1,023 1,515
加齢に伴い転倒リスクが急増
 上記で挙げた内容を補足すると、「転倒・転落・墜落」のほとんどが「スリップ、つまずき、よろめきによる同一平面上での転倒」で、階段やステップからの転落は比較的少ないようです。

 「不慮の溺死および溺水」の大多数は浴槽内で発生、同様に「その他の不慮の窒息」は気道閉塞を生じた食物・その他の物体の誤えん、「自然の力への曝露」は過度の高温・低温に晒されたものが多くを占めています。

 とりわけ転倒事故は80歳以上で割合が急増するため、十分に注意する必要があるでしょう。加齢に伴う運動能力の低下と、つまずきやすい環境の両方が重なった時、往々にして転倒は起こるものです。消費者庁では高齢者の転倒予防として、以下のポイントを挙げています。
個人に合った適度な運動を続け、体の機能の低下を防ぐ。
浴室や脱衣所には滑り止めマットを敷く。
寝起きや夜間のトイレなどで、ベッドから起き上がるときや体勢を変えるときは慎重にする。
段差のあるところや階段、玄関には手すりや滑り止めを設置する。
電源コードが通り道に来ないように電気製品を置く。
 死亡に至らないまでも、転倒の仕方によっては重い怪我を負う可能性もあります。転びにくい運動能力と環境を整えることは、高齢者に限らずあらゆる年齢層の人で大切だと言えるでしょう。
【参照】
(セールス手帖社 栗原賢二)

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