「2026年問題」はあるか
2025.04.07
「〇〇年問題」
近年、毎年のように「〇〇年問題」が登場し話題になりますが、私の実体験の中で最も古い記憶は「2000年問題」です。「Y2K問題」とも呼ばれました。
ご存知のように、西暦の年を下2桁で記録していたプログラムでは2000年が「00年」となり、1900年と見做されることで誤作動が生じ、社会の混乱が懸念された問題です。私はシステム部門ではありませんでしたが、「対策が不十分で万一不具合を発生させた場合は‥‥」と当局から厳しく牽制されていましたので、全社を挙げて事前対策にエネルギーを費やし、どきどきしながら元日を迎えたことを覚えています。
ご存知のように、西暦の年を下2桁で記録していたプログラムでは2000年が「00年」となり、1900年と見做されることで誤作動が生じ、社会の混乱が懸念された問題です。私はシステム部門ではありませんでしたが、「対策が不十分で万一不具合を発生させた場合は‥‥」と当局から厳しく牽制されていましたので、全社を挙げて事前対策にエネルギーを費やし、どきどきしながら元日を迎えたことを覚えています。
「団塊の世代」が主役の「〇〇年問題」
1947年~49年の3年間で約800万人が生まれた「団塊の世代」は、そのボリュームゆえ、節目年齢を迎える年が「〇〇年問題」として注目されてきました。
60歳の定年年齢を迎えはじめた「2007年問題」。このときは、大量退職による労働力不足に加え、ベテランの退職による技能の断絶が心配されました。
続いて、全員が高齢者の仲間入りをした「2015年問題」。労働市場からの本格的な引退と同時に、いわゆる「年金世代」になる大きな節目です。ただし、団塊の世代は男女とも、厚生年金の報酬比例部分を60歳から受給できていました。また、定額部分も女性は受給しており、65歳から受給が始まるのは男性のみでした。
団塊の世代が全員後期高齢者になる今年は、「2025年問題」として早くから注目されてきました。介護や医療といった社会保障関係の整備の必要性や費用の膨張が懸念されていたためで、「地域包括ケアシステム」も2025年をターゲットに整備が進められてきました。ちなみに、今年2月時点での75歳以上の人口は2,099万人で、総人口に占める割合は17.0%(総務省統計局「人口推計」)。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、75歳以上人口のピークは2055年で、2,479万人(対総人口24.7%)になるとみられています(「日本の将来推計人口(令和5年推計)」出生中位・死亡中位)。
60歳の定年年齢を迎えはじめた「2007年問題」。このときは、大量退職による労働力不足に加え、ベテランの退職による技能の断絶が心配されました。
続いて、全員が高齢者の仲間入りをした「2015年問題」。労働市場からの本格的な引退と同時に、いわゆる「年金世代」になる大きな節目です。ただし、団塊の世代は男女とも、厚生年金の報酬比例部分を60歳から受給できていました。また、定額部分も女性は受給しており、65歳から受給が始まるのは男性のみでした。
団塊の世代が全員後期高齢者になる今年は、「2025年問題」として早くから注目されてきました。介護や医療といった社会保障関係の整備の必要性や費用の膨張が懸念されていたためで、「地域包括ケアシステム」も2025年をターゲットに整備が進められてきました。ちなみに、今年2月時点での75歳以上の人口は2,099万人で、総人口に占める割合は17.0%(総務省統計局「人口推計」)。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、75歳以上人口のピークは2055年で、2,479万人(対総人口24.7%)になるとみられています(「日本の将来推計人口(令和5年推計)」出生中位・死亡中位)。
「2026年問題」は、はたして
「2026年問題」という言葉を耳にされたことはあるでしょうか。ネットを検索すると見つかったものの、あまりポピュラーではないようです。しかし、少子化問題をみてきた私にとっては、「丙午(ひのえうま)」は大きな問題です。
前回の「丙午」は59年前の1966年。出生数が前年よりなんと25%も減りました。「丙午」前の駆け込み出産で前年に増加がみられたせいもありますが、その前の64年と比べても21%少ない数字です。この年の合計特殊出生率は「1.58」。この当時はまだ毎年「2」を上回っていましたので、衝撃的な数字です。そして23年後の1989年、遂に「1.57」と最低記録を更新。特殊要因によらず「丙午」を下回ったので、「1.57ショック」と騒がれました。ところが、その翌年から現在まで「1.57」を上回る数字を記録したことが一度もないのが現実なのです。
「丙午」の謂れは割愛しますが、教育もマスメディアも発達していた時代に、迷信が人々の行動にこれほどまでに影響を与えたことは信じがたいことです。さて、次の「丙午」はいよいよ来年です。前回との環境の違いは、インターネットとSNSの存在でしょう。ともすればマスメディア以上に浸透力をもつことがあるこれらがどう影響するか、大変気になるところです。
前回は翌年(1967年)に出生数が対前年42%増え、丙午による減少分をほぼ取り戻すことができました。少子化が定着した現在では、仮に出生力が一旦低下したら、はたして戻るのでしょうか。
前回の「丙午」は59年前の1966年。出生数が前年よりなんと25%も減りました。「丙午」前の駆け込み出産で前年に増加がみられたせいもありますが、その前の64年と比べても21%少ない数字です。この年の合計特殊出生率は「1.58」。この当時はまだ毎年「2」を上回っていましたので、衝撃的な数字です。そして23年後の1989年、遂に「1.57」と最低記録を更新。特殊要因によらず「丙午」を下回ったので、「1.57ショック」と騒がれました。ところが、その翌年から現在まで「1.57」を上回る数字を記録したことが一度もないのが現実なのです。
「丙午」の謂れは割愛しますが、教育もマスメディアも発達していた時代に、迷信が人々の行動にこれほどまでに影響を与えたことは信じがたいことです。さて、次の「丙午」はいよいよ来年です。前回との環境の違いは、インターネットとSNSの存在でしょう。ともすればマスメディア以上に浸透力をもつことがあるこれらがどう影響するか、大変気になるところです。
前回は翌年(1967年)に出生数が対前年42%増え、丙午による減少分をほぼ取り戻すことができました。少子化が定着した現在では、仮に出生力が一旦低下したら、はたして戻るのでしょうか。
図:前回の「丙午」前後の出生数と合計特殊出生率

森 義博(もり・よしひろ)
公益財団法人ダイヤ高齢社会研究財団 シニアアドバイザー
CFP®、1級FP技能士、1級DCプランナー、ジェロントロジー・マイスター
1958年横浜市生まれ。大学卒業後、国内大手生命保険会社入社、2001年から同グループの研究所で少子高齢化問題、公的年金制度、確定拠出年金、仕事と介護の両立問題などを研究。2015年ダイヤ高齢社会研究財団に出向し研究を継続。2024年4月から現職。
趣味はピアノ演奏と国内旅行(とくにローカル鉄道)。
CFP®、1級FP技能士、1級DCプランナー、ジェロントロジー・マイスター
1958年横浜市生まれ。大学卒業後、国内大手生命保険会社入社、2001年から同グループの研究所で少子高齢化問題、公的年金制度、確定拠出年金、仕事と介護の両立問題などを研究。2015年ダイヤ高齢社会研究財団に出向し研究を継続。2024年4月から現職。
趣味はピアノ演奏と国内旅行(とくにローカル鉄道)。