奨学金を返すのが難しい場合の3つの制度

森田 和子
2025.04.10

 日本学生支援機構の奨学金は、大学や専門学校などに通う学生に多く利用されていますが、卒業後に返していけるのだろうかと不安を感じる人もいます。卒業後に返還が難しくなった場合には、通常の返還とは異なる方法を選択できる場合があります。もしもの場合にすべきことがわかっていれば不安を減らすことができます。2024年からの変更点もあるので、内容を確認していきましょう。
返還が難しい場合の3つの制度
 返還が難しい場合に選択できる制度は、大きく分けると以下の3つになります。
月々の返還額を少なくする「減額返還制度」
返還を待ってもらう「返還期限猶予」
死亡又は精神若しくは身体の障害による「返還免除」
 どの制度も願い出にあたり、マイナンバーと所定の書類を提出することが必要です。 また、審査により承認されない場合は、通常の返還を継続する必要があります。

 「減額返還制度」は、「変換誓約書」等で約束した返還月額での返還は困難であっても、減額すれば返還できる場合の制度です。災害、傷病、その他経済的理由により奨学金の返還が困難であっても、減額すれば返還可能である人が対象です。1回あたりの返還月額を1/2、1/3に減額できますが、2024年4月からは1/4、2/3への減額も選択できるようになりました。また、同時期に利用可能な年収上限も緩和されて年間収入400万円以下に引き上げられ、さらに、子どもの扶養人数に応じた引き上げもあります。減額の適用期間に応じた分は、通算15年まで返還期間の延長が可能です。

 「返還期限猶予」は、一定期間返還を先送りすることができる制度です。災害、傷病、経済困難などにより、返還が困難な場合が対象です。2024年4月からは失業も対象になりました。返還期限猶予が承認された期間は返還する必要はありません。適用期間後に返還が再開され、それに応じて返還終了年月も延期されます。適用期間の上限は通算10年です。

 「返還免除」は、返還未済額の全部または一部の返還を免除する制度です。本人が死亡し返還ができなくなった場合、精神または身体の障害により労働能力を喪失、または労働能力に高度の制限を有し、返還ができなくなった場合が対象です。

 これらの制度を願い出る場合は、所定の書類を日本学生支援機構に提出しますが、減額返還制度と返還期限猶予については、日本学生支援機構の情報システムであるスカラネット・パーソナルから行える場合があります。

 家計が厳しいときには、無理をして返還を続けるよりも、早めにこれらの制度の利用を検討してみてください。減額返還制度や返還期限猶予は、元金や利子が減るものではありませんが、一時的に負担が減ることで冷静に家計と向き合えるようになります。そこから、家計を立て直していきましょう。
参考:
森田 和子(もりた・かずこ)
FPオフィス・モリタ 代表
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者、DCA(確定拠出年金アドバイザー)

大学卒業後、コンピュータソフト会社、生命保険会社勤務を経て、1999年独立。保険や投資信託の販売をしない独立系のファイナンシャル・プランナー事務所としてコンサルティングを行っている。
お金の管理は「楽に、楽しく」、相談される方を「追い詰めない」のがモットー。情報サイト・新聞・雑誌への執筆多数。企業・学校・イベントで行うマネープランセミナー・講演も好評。

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