大学や短大、専門学校等の修学支援について

常國 誠一郎
2025.05.22

高校・大学の授業料を巡る最近の動向
 令和7年4月から年間11万8,800円の就学支援金の所得制限が撤廃され、公立高校の授業料は実質的に無償になりました。また、令和8年4月から私立高校を対象に加算されている就学支援金が年間45万7,000円(私立高校の全国平均の授業料)に引き上げられ、所得制限が撤廃される予定です。高校の授業料無償化が全国レベルで大きく前進することになります。

 他方、大学の授業料はどうなっているのでしょうか。たとえば、令和7年度から東京大学の授業料が年間53万5,800円から国が定める上限の64万2,960円まで10万円余り引き上げられています。授業料の引上げに伴い、東京大学は「授業料の全額免除の対象を世帯年収400万円以下の学生から世帯年収600万円以下に拡大」「世帯年収900万円以下の地方出身学生の授業料を4分の1免除」といった学生支援策を打ち出しています。

 高校卒業後の進路について、高校の授業料無償化と同じような支援策があるのか、制度内容を確認してみましょう。
高等教育の修学支援新制度
 国は、大学・短期大学・高等専門学校・専門学校に進学できるチャンスを確保できるよう、令和2年4月から高等教育の修学支援新制度※1を実施しています。この制度は2つの支援からなっています。

・授業料・入学金の免除または減額(授業料等減免)
・給付型奨学金の支給

 支援内容の概略は、以下のとおりです。
支援を受けられる年収の目安と支援額:両親・本人(18歳)・中学生の家族4人世帯の場合
授業料等減免の上限額(年額):住民税非課税世帯の学生の場合
住民税非課税世帯に準ずる世帯の学生は、2/3または1/3の支援額となる
給付型奨学金の給付額(月額):住民税非課税世帯の学生の場合
住民税非課税世帯に準ずる世帯の学生は、2/3または1/3の支援額となる
生活保護世帯で自宅通学および児童養護施設等から通学する人は、括弧内の金額
支援対象の拡大
 支援の対象は、住民税非課税世帯・それに準ずる世帯の学生ですが、支援の金額は相応に充実しているというのが筆者の第一印象です。独立行政法人日本学生支援機構のデータ※2によれば、令和5年度の給付奨学金の給付金額は1,528億円、給付件数は34万2,000件です。平成29年度に給付奨学金制度が創設されるまではゼロだったことを考えると、大幅な拡充といえます。

 また、令和7年度から、多子世帯の学生等に対して所得制限なく、大学等の授業料・入学金を国が定めた一定額まで減額・免除する新しい制度※3がスタートしており、文部科学省は授業料等減免の対象者を約41万人と推計しています。支援の対象は「扶養する子供が3人以上かつ大学等に通っている場合」と限定的で、「わが家は対象とならない」とがっかりされる方もおられるかもしれませんが、支援対象は確実に広がっていると評価できるのではないでしょうか。今後、支援対象が拡充されることも十分に考えられます。

 国の支援を期待しつつ、学資保険等による教育資金の準備を検討したいものです。
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(セールス手帖社 常國誠一郎)

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