働きながらがん治療を行っている患者さんが増える中、「がん治療と仕事の両立支援」を行うことは、企業だけでなく従業員さんにも多くのメリットを与えます。

 大切な従業員さんががんに罹患した後も、安心して働き続けることができる環境を作ることは、企業の継続的な発展のためにも重要です。

 では、実効性のある「がん治療と仕事の両立支援」を行うためには、何が必要なのでしょうか？

 初めに取り組んでいただきたいことは、現状の把握です。

 従業員さんにアンケートを取り、「がん治療と仕事の両立支援」の現状についての意見を聞いてみてください。

 例えば、「もしがんなどの病気の治療や検査のために2週間に1回程度病院に通う必要がある場合、働き続けられる環境だと思いますか？」などと質問をしてみてください。

 「がん治療と仕事の両立支援」を行いたいと考えていることを伝え、忌（き）憚（たん）のない意見を聞くことから始めてください。

 次に、アンケートの回答を踏まえ、「がん治療と仕事の両立支援」に関する企業目標と基本方針を策定してください。

 難しく考えずに、実践的な企業目標と基本方針にすることが重要です。

 完成したらそれを従業員さんに周知する方法を検討し、経営者自らが「がん治療と仕事の両立支援に関する取り組み宣言」を行ってください。

 経営者が宣言を行うことが重要です。経営者が宣言をすることで、がんに罹患した従業員さんだけでなく他の従業員さんに対しても「病気になっても働き続けられる！」「辞めなくていいんだ！」という安心感を与えることになります。

 難しい話をする必要はなく、「がんに罹患しても辞める必要がないこと」を伝えるだけで十分です。

 また企業目標や基本方針を、会社全体で共有することも重要です。「がん治療と仕事の両立支援を行うことが当たり前だ！」という企業風土を醸（じょう）成（せい）するための研修や勉強会を企画し、継続した啓蒙活動の実施について検討してください。

 長時間の研修や勉強会を行うことよりも、短時間でも構いませんので継続的に開催し続けることが重要です。3か月に1回でも、半年に1回でも構いませんので、まずは1年間の開催スケジュールを検討してください。

 研修や勉強会では、がんやがん治療に関する基本的な情報提供も行ってください。

 がんは早期発見することができれば克服できる病気になっていること、早期発見のためにはがん検診等の受診が大切なこと、要精密検査となった場合には迅速な対応が必要なこと、がんの三大治療と通院治療が中心となってきている治療現場の現状、がん治療に備えたお金の準備（保険の確認等）の必要性などについてもお話しになってください。

 社内規定についても、十分に理解が進んでいない場合があります。会社が既に準備をしている支援制度などとともに、社内規定についても説明し、高額療養費制度等、国からの支援についても説明をしてください。

 実効性のある「がん治療と仕事の両立支援」を行うためには、社内の「相談窓口」の設置や休暇制度・勤務制度の再検討、復職プランの策定も重要です。

 関係部署・人事部門・専門家等の意見も聞きながら、実効性のあるプラン策定を行ってください。

 今回は「両立支援を行うための環境整備」について、お話をさせていただきました。