火災保険の「2025年問題」とは?

高橋 浩史
2025.11.06

 火災保険の契約期間短縮と保険料上昇が重なる「2025年問題」。制度変更の背景とともに、営業現場での新たな提案機会を考えてみます。
契約期間短縮と保険料上昇、その背景にある“災害リスクの増大”
 かつて、火災保険の契約期間は最長36年でしたが、その後、10年、5年へと段階的に短縮されました。10年に短縮されたのが2015年10月で、今年はその10年後にあたるため、2025年10月以降に更新手続きの増加が見込まれます。

 また、損害保険料率算出機構による参考純率の複数回の引き上げを受け、損害保険各社の火災保険の保険料は上昇を続けてきました。その結果、2025年の更新時には10年前よりも保険料負担が大きく増える見通しです。多くの契約者が更新を迎え、かつ、保険料の大幅な値上げが懸念されることから、「火災保険の2025年問題」と呼ばれています。

 こうした契約期間の短縮や保険料引き上げの背景には、台風・豪雨・地震などの自然災害の多発が挙げられます。契約期間が長いと将来のリスクを見通しにくく、保険料の算定が難しくなるため、5年契約への短縮でリスクを平準化する狙いがあります。

 また、災害による保険金支払いの増加で保険会社の収支が悪化しており、長期契約のままでは次の更新まで保険料改定が行いにくい点も理由のひとつです。加えて、気候変動による地域差の拡大を踏まえ、今後はエリア別リスクに応じた料率設定も進むとみられます。
「2025年問題」は営業チャンス!更新提案で信頼を築く
 契約期間の短縮は、営業担当者にとって「顧客との接点が増える」という新たなチャンスにもなります。これまで10年に一度だった更新が5年ごとに訪れることで、契約者との関係性を見直す機会が増えるのです。

 更新時には、建物の老朽化や家族構成の変化などをヒアリングし、補償内容を再設計することが大切です。特に近年は都市部でも、豪雨による「内水氾濫」などの水害リスクが増加しています。こうした実情を踏まえたリスクマネジメント提案が求められます。

 一方で、保険料上昇に伴う家計への影響は無視できません。物価高が続く中、保険料の節約のために、必要な補償まで外してしまうことは避けるべきです。「災害多発時代における補償の必要性」「火災保険が生活再建のための社会的インフラ」であることを、丁寧に説明することが求められます。

 火災保険の2025年問題は、単なる制度改定ではなく、営業担当者にとって顧客理解を深める絶好のタイミングです。更新の機会を通じて信頼を積み重ね、最適な補償を提案することが、競合との差別化の鍵となるでしょう。
高橋 浩史(たかはし・ひろし)
FPライフレックス 代表
日本ファイナンシャルプランナーズ協会CFP®
1級ファイナンシャル・プランニング技能士

東京都出身。デザイン会社などでグラフィックデザイナーとして20年活動。 その後、出版社で編集者として在職中にファイナンシャル・プランナー資格を取得。2011年独立系FP事務所FPライフレックス開業。 住宅や保険など一生涯で高額な買い物時に、お金で失敗しないための資金計画や保障選びのコンサルタントとして活動中。 その他、金融機関や出版社でのセミナー講師、書籍や雑誌での執筆業務も行う。
ホームページ http://www.fpliflex.com
ブログ http://ameblo.jp/kuntafp/

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