健康診断にかかる費用と実施後の措置について

庄司 英尚
2025.11.17

健康診断の費用は誰が負担するのか?
 今回は、健康診断について経営者が気になる点や、実施後にすべきことなどを紹介する。

 健康診断にかかる費用は誰が負担するのかというと、労働安全衛生法等で会社に義務付けられている。健康診断の費用は、会社に健康診断の実施が義務付けられている以上、当然に会社が負担すべきものとなっている。

 定期健康診断において、人間ドックやオプション検査を従業員が希望した場合、これら法定外の健診費用については会社に負担義務はない。受けたいという従業員には、その分は原則、本人負担になることを事前にしっかり説明をして後でトラブルにならないようにしておく必要がある。
定期健康診断を受けている時間の賃金はどうなるのか?
 従業員が定期健康診断を受けている時間の賃金はどうなるのかという相談は多い。これについて厚生労働省は以下の見解を示し、賃金の支払いを勧めている。一方、特殊健康診断については賃金の支払いが必要としている。
一般健康診断は、一般的な健康確保を目的として事業者に実施義務を課したものですので、業務遂行との直接の関連において行われるものではありません。そのため、受診のための時間についての賃金は労使間の協議によって定めるべきものになります。ただし、円滑な受診を考えれば、受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましいでしょう。
出典:
厚生労働省 安全衛生に関するQ&A 健康診断を受けている間の賃金はどうなるのでしょうか?
下線は筆者による。
健康診断実施後の措置や労働基準監督署への報告義務
 健康診断の受診機関を指定せず、従業員に自由に選択させている会社もあるが、肝心の健康診断結果を提出してこない従業員がいる場合もある。労働安全衛生法では、会社は従業員の健康状態を把握し配慮していなければならず、健康診断結果は所見の有無にかかわらず受診者全員に通知しなければならない。健康診断結果について会社は医療機関や従業員に提出するよう依頼できる。また、会社は従業員ごとに健康診断個人票を作成し、5年間保存義務があることも忘れてはならない。

 健康診断によって異常の所見があると従業員が診断された場合、会社は当該従業員の健康を保持するために医師等から意見を聴取し、必要ならその者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少など適切な措置を講じなければならない。

 最後に、50名以上の従業員を雇用する会社が定期健康診断、特定業務従事者の健康診断を実施した際は、遅滞なく定期健康診断結果報告書を所轄労働基準監督署に提出しなければならないのでこの点も覚えておきたい
特殊健康診断についても報告義務はあるが、健康診断の種類によって期限や様式等が異なるのでここでは省略する。
参照:
庄司 英尚(しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、アイウェーブ社労士事務所 代表
社会保険労務士 人事コンサルタント

福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所(現・アイウェーブ社労士事務所)を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続き及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。

公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/

▲ PAGE TOP