就労者にとっての介護(続編)
2026.01.05
365万人が「ワーキングケアラー」
80代後半の男性の3割弱、女性の4割以上が公的介護保険を受給していること(厚労省「令和6年度介護給付費等実態統計」)、また、家族の介護をしながら働くいわゆる「ワーキングケアラー」が約365万人で増加傾向にあること、さらに毎年約10万人が家族の介護や看護のために離職していること(総務省「令和4年度就業構造基本調査」)を前回(No.4956)まででお伝えしました。
今回はダイヤ高齢社会研究財団(ダイヤ財団)の2つの調査をもとに「ワーキングケアラー」についていくつかの角度から見ていくことにします。
今回はダイヤ高齢社会研究財団(ダイヤ財団)の2つの調査をもとに「ワーキングケアラー」についていくつかの角度から見ていくことにします。
介護をまだ担っていない社員の6割以上が「ワーキングケアラー予備群」
ダイヤ財団では三菱グループの企業のうち18社約2万7千名の協力を得て「仕事と介護の両立に関する調査」を2024年度に実施しました。回答結果は現在分析中で全容は未公開ですが、刊行物※1等で一部発表していますので、少しご紹介します。
現在介護をしながら働いている「ワーキングケアラー」は回答者全体の7.7%でした。総務省の「就業構造基本調査」結果をもとに「ワーキングケアラー」の割合を計算すると5.4%※2なので、それより2ポイント強高い数字です。どちらの調査も「介護」の定義は同じ(日常生活において入浴・着替え・トイレ・移動・食事などの際に何らかの介助や手助けをすること)で、要介護認定の有無や同居・非同居を問わない点も同様です。それでも両者に差が生じたのは、ダイヤ財団の調査は対象企業の年齢構成がやや高い傾向があることと、介護と両立しやすい制度が整っている企業が多いことが理由と考えられます。
ところで、現在は介護をしていないが近い将来介護を担う可能性のある就労者(ワーキングケアラー予備群、以下「予備群」)の割合はどのくらいでしょうか。それを探ることがダイヤ財団の調査目的のひとつでした。この調査での「予備群」の条件は、現在介護をしていない人のうち、“健康状態に心配がある”か“日常生活においてなんらかの生活支援をしている”親(配偶者の両親も含む)が一人でもいる人です。このように条件を比較的広く設定したこともあって、介護をしていない社員の6割以上が「予備群」に該当しました。
ちなみに、親の健康状態に心配があると回答した人のうち、最も多かった内容は「体力の低下」(47.2%)で、「物忘れなど認知機能の低下」(25.3%)、「気分の落ち込みや不安」(13.0%)が続きます。また、生活支援で多かった回答は「ちょっとした困りごと(携帯電話や家電の操作方法、蛍光灯の交換など)への対応」、「精神的な支え(相談相手、電話、定期的な訪問)」などでした。
こうした生活支援を「予備群」の要素としたのは、普段からちょっとしたことを支援している人が、いざ介護が必要になった際にまっさきに介護を担当する可能性が高いと考えられるからです。
現在介護をしながら働いている「ワーキングケアラー」は回答者全体の7.7%でした。総務省の「就業構造基本調査」結果をもとに「ワーキングケアラー」の割合を計算すると5.4%※2なので、それより2ポイント強高い数字です。どちらの調査も「介護」の定義は同じ(日常生活において入浴・着替え・トイレ・移動・食事などの際に何らかの介助や手助けをすること)で、要介護認定の有無や同居・非同居を問わない点も同様です。それでも両者に差が生じたのは、ダイヤ財団の調査は対象企業の年齢構成がやや高い傾向があることと、介護と両立しやすい制度が整っている企業が多いことが理由と考えられます。
ところで、現在は介護をしていないが近い将来介護を担う可能性のある就労者(ワーキングケアラー予備群、以下「予備群」)の割合はどのくらいでしょうか。それを探ることがダイヤ財団の調査目的のひとつでした。この調査での「予備群」の条件は、現在介護をしていない人のうち、“健康状態に心配がある”か“日常生活においてなんらかの生活支援をしている”親(配偶者の両親も含む)が一人でもいる人です。このように条件を比較的広く設定したこともあって、介護をしていない社員の6割以上が「予備群」に該当しました。
ちなみに、親の健康状態に心配があると回答した人のうち、最も多かった内容は「体力の低下」(47.2%)で、「物忘れなど認知機能の低下」(25.3%)、「気分の落ち込みや不安」(13.0%)が続きます。また、生活支援で多かった回答は「ちょっとした困りごと(携帯電話や家電の操作方法、蛍光灯の交換など)への対応」、「精神的な支え(相談相手、電話、定期的な訪問)」などでした。
こうした生活支援を「予備群」の要素としたのは、普段からちょっとしたことを支援している人が、いざ介護が必要になった際にまっさきに介護を担当する可能性が高いと考えられるからです。
※1:
(公財)ダイヤ高齢社会研究財団『ダイヤニュース No.117』(2025年10月発行)
※2:
『令和4年就業構造基本調査 結果の概要』をもとに、「介護をしている者のうち有業者数(p.1 表1-1)」÷「有業者数(p.25 表7-2)」で算出
介護経験者の資質を企業で活かすという発想
ところで、就労者の介護というと、離職防止、介護休暇・休職時の業務のフォローのように、介護を就労に対するマイナス要因と位置づけて対応策を講じるという方向性が一般的でしょう。しかし、はたして介護には就労に対してプラスに作用する面はないのでしょうか。
ダイヤ財団では、親を介護した経験によって「協調性」「忍耐力」「傾聴力」「対人折衝力」「計画性」といった能力が高まるのではないかとの仮説の下、2020年に実施した「介護と就労に関する調査」の中で介護経験者と未経験者に質問しました。実績ではなく、あくまでも回答者の“考え”を尋ねた結果ですが、印象深い結果が得られましたので、ご紹介します。
質問した5つの要素のうち、介護経験者自身は全てについて肯定派(「おおいにそう思う」「ややそう思う」)が2/3を超えており、中でも「忍耐力が高まる」は85.9%に達しています。一方の介護未経験者も「対人折衝力」を除く4項目で肯定派が半数を超えました。職場の周囲の人の多くも介護経験のプラス効果として認めていることがわかります。
今後、社内に介護経験者が増加していくことは間違いありません。介護経験者をそうした特質を活かせる職務や部署に配置する人財活用は、企業の有効な人事戦略になるのではないでしょうか。
ダイヤ財団では、親を介護した経験によって「協調性」「忍耐力」「傾聴力」「対人折衝力」「計画性」といった能力が高まるのではないかとの仮説の下、2020年に実施した「介護と就労に関する調査」の中で介護経験者と未経験者に質問しました。実績ではなく、あくまでも回答者の“考え”を尋ねた結果ですが、印象深い結果が得られましたので、ご紹介します。
質問した5つの要素のうち、介護経験者自身は全てについて肯定派(「おおいにそう思う」「ややそう思う」)が2/3を超えており、中でも「忍耐力が高まる」は85.9%に達しています。一方の介護未経験者も「対人折衝力」を除く4項目で肯定派が半数を超えました。職場の周囲の人の多くも介護経験のプラス効果として認めていることがわかります。
今後、社内に介護経験者が増加していくことは間違いありません。介護経験者をそうした特質を活かせる職務や部署に配置する人財活用は、企業の有効な人事戦略になるのではないでしょうか。
図
介護経験の効果――介護経験のある人とない人の意見の比較(40代・50代の正社員)
出所)
(公財)ダイヤ高齢社会研究財団「介護と就労に関する調査」報告書(2020年8月)を基に作成

森 義博(もり・よしひろ)
公益財団法人ダイヤ高齢社会研究財団 シニアアドバイザー
CFP®、1級FP技能士、1級DCプランナー、ジェロントロジー・マイスター
1958年横浜市生まれ。大学卒業後、国内大手生命保険会社入社、2001年から同グループの研究所で少子高齢化問題、公的年金制度、確定拠出年金、仕事と介護の両立問題などを研究。2015年ダイヤ高齢社会研究財団に出向し研究を継続。2024年4月から現職。
趣味はピアノ演奏と国内旅行(とくにローカル鉄道)。
CFP®、1級FP技能士、1級DCプランナー、ジェロントロジー・マイスター
1958年横浜市生まれ。大学卒業後、国内大手生命保険会社入社、2001年から同グループの研究所で少子高齢化問題、公的年金制度、確定拠出年金、仕事と介護の両立問題などを研究。2015年ダイヤ高齢社会研究財団に出向し研究を継続。2024年4月から現職。
趣味はピアノ演奏と国内旅行(とくにローカル鉄道)。







