がんの自由診療特約についての考察

高橋 義人
2026.03.30

 昨今、いくつかの保険会社からがんの自由診療に対応する「特約」が発売されています。
 既にお取り扱いになっている方も多いと思いますが、今回はこの特約について考えてみたいと思います。
自由診療に対応する特約で注意すること
 まずは自由診療の定義について簡単に確認していきます。
 自由診療とは、公的医療保険制度が適応にならない治療のことをいいます。公的医療保険制度が適応にならないため、治療費は全額が患者さんの自己負担となり、場合によっては数百万円から数千万円という大きな費用が発生してしまうことがあります。
 そうした治療費を負担してくれるものが、「がんの自由診療に対応してくれる特約」です。

 素晴らしい特約なのですが、注意しなくてはいけない点もあります。
 保険会社ごとに保険料は異なりますが、各保険会社とも月々数百円程度の保険料です。お取り扱いになっている保険会社の保険料を確認してみてください。

 一方で保障額はいくらなのか。多くの保険会社が1億円に設定しています。なぜ月々数百円の保険料で1億円の保障を提供することができるのでしょうか。
 これが今回のコラムのポイントになります。

 保険商品は金融庁の認可商品です。そのためバーゲン商品もありませんし、お客さんの役に立たない悪い商品もありません。
 「安い保険料で大きな保障」には、やはり理由があります。

 以前、実際にあったトラブルをご紹介します。
 抗がん剤治療を行っていた患者さんが自由診療として行われている、ある治療に興味を持ち、治療を行っているクリニックを訪問されました。治療に関する説明を受け、治療を受けたい旨、先生にお伝えし治療費を確認したところ400万円以上の治療費がかかることがわかりました。
 高額な治療費だったのですが、「がんの自由診療に対応してくれる特約」に加入していたため、治療を受けることを決めて手続きを行いました。
 後日、保険会社に請求手続きを確認したところ「今回の自由診療の治療は、給付金の支払い対象にはならない。」と言われてしまいました。
 なぜ支払い対象とならないか、おわかりになりますか。

 理由は、保険会社が指定している対象病院での治療ではなかったからです。
 「がんの自由診療に対応してくれる特約」について、まず確認していただきたいことは各保険会社が指定している対象病院です。
 保険会社が指定している対象病院は、都道府県がん診療連携拠点病院・地域がん診療連携拠点病院・がんゲノム医療中核拠点病院・がんゲノム医療拠点病院・がんゲノム医療連携病院・特定機能病院等に指定されている、いわゆる大病院です。
将来に向けて、がんの自由診療に対応してくれる特約を……
 ここで皆さんに質問です。
 これらの大病院で、公的医療保険制度が適応にならない自由診療の治療が行われているでしょうか。
 実は一部の例外を除き、これまでは、こうした大病院では自由診療の治療は積極的には行われていませんでした。大病院の役割は、診療ガイドラインに沿った健康保険適用の標準治療を行うことです。
 現在はがんのゲノム医療の開始を受け、また「患者申出療養制度」を利用することによって、ようやく一部の大病院で自由診療のがん治療が始まっているような状況です。
 ただし、皆さんもご存じの通り、一部を除きがんは今でも原因のわからない病気のため、これからも新しい治療方法はどんどん開発されていくでしょう。
 今後はがんのゲノム医療が前例となり、大病院で行われる自由診療のがん治療も増えていくことと思います。

 以上のお話をまとめますと、「がんの自由診療に対応してくれる特約」は大病院での自由診療を前提としているため、現在は利用頻度が高くないかもしれません。
 しかし、がんは原因がわからない病気のため、今後も新しい治療方法が開発されます。新しい治療方法が開発された場合、今行われているがんのゲノム医療が前提となり、大病院で行われる自由診療の治療も増えていくのではないかと思います。
 つまり、「がんの自由診療に対応してくれる特約」は、現在の利用頻度は高くはないのですが、将来に向け必要になってくる保障だということをお客様にお伝えいただき、ご契約いただくようにしていただければと思います。この特約の利用頻度は5年後・10年後、高くなっていくと思います。

 今回は「がんの自由診療に対応してくれる特約」についてお話しさせていただきました。
高橋 義人(たかはし・よしひと)
株式会社M&Fパートナーズ 代表取締役
一般社団法人 健康事業支援機構 医療コーディネーター
ユニバーサルライフ株式会社 執行役員 東京第2支社長

1988年明治大学卒業後、外資系大手生命保険会社に23年間勤務。静岡・埼玉・大阪にて支社長を務め、2011年に独立。
その後、「がん治療とお金」のコンサルティング会社を設立し、現在に至る。
医療コーディネーターとしてがん患者と向き合い、患者目線に立った治療に関する情報提供・病院紹介・治療紹介・病院へのアテンド等の患者支援活動の傍ら、セミナー講師としてがん患者の目線に立ったがんに関する様々な講演を、日本全国で毎年150回以上行っている。
ホームページ https://mfpartners.co.jp

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