年金法改正 65歳からも働く方は老齢厚生年金の繰下げ受給が有力な選択肢に
2026.06.25
1.在職老齢年金制度の支給停止調整額が引上げに
老齢年金は、老齢となり働く収入が得られない方への年金です。そのため、働いて収入を得ている方は、収入に応じて年金を減らす仕組みである在職老齢年金制度が適用されます。
具体的には、基本月額(報酬比例部分の年金月額)と総報酬月額相当額(その月の報酬月額+その月以前1年間のボーナスの合計/12月)の合計が支給停止調整額を上回る場合は、上回った額の2分の1が支給停止となります。この支給停止調整額が令和7年度は51万円でしたが、令和8年4月から65万円と大きく引上げられました。
具体的には、基本月額(報酬比例部分の年金月額)と総報酬月額相当額(その月の報酬月額+その月以前1年間のボーナスの合計/12月)の合計が支給停止調整額を上回る場合は、上回った額の2分の1が支給停止となります。この支給停止調整額が令和7年度は51万円でしたが、令和8年4月から65万円と大きく引上げられました。
2.なぜ、繰下げ受給が注目されるのか?
65歳で老齢厚生年金の受給権を有する方は、希望すれば66歳以後に繰下げて年金を受け取ることができます。繰下げ受給は、繰下げした月数ごとに0.7%の割合で年金額が増額されます。
一方で、65歳以後も働き続け報酬を受けている場合は、繰下げ待機期間中で老齢厚生年金を受給していない場合であっても、在職老齢年金制度が適用され、支給停止と計算された額が繰下げの対象額から除かれます。
令和7年の年金法改正で、支給停止調整額が大きく引き上げられたことから、繰下げた場合でも支給停止を気にすることなく働くことができるようになります。
具体的には、基本月額10万円で総報酬月額相当額52万円としても支給調整がかからなくなりました。
令和7年度 支給停止額:{(10万円+52万円)- 51万円}÷2=5万5,000円
令和8年度 支給停止額:{(10万円+52万円)- 65万円}<0 支給停止なし
つまり、「働いている間は給与等で生活し、その後は65歳時の年金額すべてを繰下げの対象とする増額年金を受け取る」というライフプランが可能になりました。
一方で、65歳以後も働き続け報酬を受けている場合は、繰下げ待機期間中で老齢厚生年金を受給していない場合であっても、在職老齢年金制度が適用され、支給停止と計算された額が繰下げの対象額から除かれます。
令和7年の年金法改正で、支給停止調整額が大きく引き上げられたことから、繰下げた場合でも支給停止を気にすることなく働くことができるようになります。
具体的には、基本月額10万円で総報酬月額相当額52万円としても支給調整がかからなくなりました。
令和7年度 支給停止額:{(10万円+52万円)- 51万円}÷2=5万5,000円
令和8年度 支給停止額:{(10万円+52万円)- 65万円}<0 支給停止なし
つまり、「働いている間は給与等で生活し、その後は65歳時の年金額すべてを繰下げの対象とする増額年金を受け取る」というライフプランが可能になりました。
3.繰下げ受給の注意3ポイント
繰下げ受給は年金額を増やすメリットがありますが、注意しなければならない点もあります。
①
加給年金額は、繰下げ待機期間中は受け取れない
加給年金額の対象となる年下の配偶者がいる場合は、要注意です。配偶者加給年金額は繰下げ待機期間中支給されません。令和8年度で423,700円です。年齢差が3歳ある場合は、約120万円を受け取れないことになります。
加給年金額の対象となる年下の配偶者がいる場合は、要注意です。配偶者加給年金額は繰下げ待機期間中支給されません。令和8年度で423,700円です。年齢差が3歳ある場合は、約120万円を受け取れないことになります。
②
受給総額が逆転するのは繰下げ受給開始から早くても11年11カ月後
65歳で年金を120万円受け取れた場合、5年繰下げると600万円受け取っていなかったことになります。70歳から42%増額となる年金を受け取ったとしても、81歳11カ月を過ぎないと、受給総額は逆転しません。
(∵)120万円×42%=50.4万円、600万円÷50.4万円=11.90年
65歳で年金を120万円受け取れた場合、5年繰下げると600万円受け取っていなかったことになります。70歳から42%増額となる年金を受け取ったとしても、81歳11カ月を過ぎないと、受給総額は逆転しません。
(∵)120万円×42%=50.4万円、600万円÷50.4万円=11.90年
③
年金額の増額により、医療保険・介護保険等の保険料や所得税・住民税が増える場合がある
老齢年金は雑所得として課税対象です。そのため、年金収入増となれば算出される社会保険料や税金が増える可能性があります。
老齢年金は雑所得として課税対象です。そのため、年金収入増となれば算出される社会保険料や税金が増える可能性があります。
繰下げ受給を希望する場合は、まず「繰下げた場合の年金額はいくらになるのか、受給総額が逆転するのはいつになるのか」など、年金事務所または街角の年金相談センターで相談することをお勧めます。
《参考資料》
津路 伸江(つじ・のぶえ)
津路社会保険労務士事務所 代表
特定社会保険労務士
1級ファイナンシャルプランニング技能士
平成9年、横須賀にて津路社会保険労務士事務所設立。
地元企業の顧問を務め、労働・社会保険手続き、その他各種相談業務を行う。
労働基準監督署、社会保険事務所(当時)で受付等に従事。
労働講座の講師を8年、消費者センター主催の年金講座を10年務める。
平成28年、埼玉県北本市に事務所を移転。
年金事務所および街角の年金相談センター等で約15年、年金相談業務に従事。
各種検定業務の検定委員等を務める。
公式サイト:https://www.ntsuji-sr.com/office.html
特定社会保険労務士
1級ファイナンシャルプランニング技能士
平成9年、横須賀にて津路社会保険労務士事務所設立。
地元企業の顧問を務め、労働・社会保険手続き、その他各種相談業務を行う。
労働基準監督署、社会保険事務所(当時)で受付等に従事。
労働講座の講師を8年、消費者センター主催の年金講座を10年務める。
平成28年、埼玉県北本市に事務所を移転。
年金事務所および街角の年金相談センター等で約15年、年金相談業務に従事。
各種検定業務の検定委員等を務める。
公式サイト:https://www.ntsuji-sr.com/office.html






