遺族厚生年金の見直しで何が変わる?改正のポイント

岡﨑 一恵
2026.07.16

 2025(令和7)年6月に成立した年金制度改正において、大きな注目を集めたのが、「遺族厚生年金の見直し」です。2028(令和10)年4月の施行が予定されていますが、あらためて改正の背景と内容を解説します。
改正の背景は「社会の変化」
 かつては、「夫が働き、妻が家を守る」という家庭モデルが一般的でした。そのため、夫を亡くした妻が生活に困らないよう、30歳以上の女性には、生涯にわたり遺族年金が支給される仕組みとなっていました。

 しかし、共働き世帯の増加や女性の就業率の向上といった社会の変化を踏まえ、遺族厚生年金の男女差を解消する見直しが行われることになりました。
 これにより、子(18歳になった年度末までの間にある子、または障害のある20歳未満の子)がおらず、60歳未満で配偶者と死別した方の遺族厚生年金は、男女ともに5年間の有期給付となります。男性は2028年4月から適用されますが、女性は20年かけて段階的に適用されます。ただし、2028年度末時点で40歳未満の女性は、施行直後から適用されます。

 なお、有期給付には新たに加算(有期給付加算)が上乗せされ、現在の遺族厚生年金の額の約1.3倍となります。
見直しの影響を受けない方は?
 子がいる場合は、改正後も現行と同様に遺族厚生年金が支給されます。また、遺族基礎年金の子の加算額が増額(年間約23.5万円→年間約28万円)となるため給付額は増えます。

 その他、改正前から遺族厚生年金を受給している方や、60歳以降に配偶者と死別された方、1989(平成元)年4月1日以前に生まれた女性は見直しの影響を受けません。
「中高齢寡婦加算」も廃止
 もう1つの大きな変更点が「中高齢寡婦加算の廃止」です。1985(昭和60)年の改正において、就労可能性が乏しい中高齢寡婦への配慮から「中高齢寡婦加算」が設けられましたが、この加算が25年かけて段階的に廃止されることになりました。

 今回の見直しは、専業主婦など遺族年金による生活保障を想定していた方にとっては影響が大きいかもしれません。ただし、5年の有期給付の終了後も、障害状態にある方や収入が十分でない方は、引き続き増額された遺族厚生年金(継続給付)を受給できます。

 この継続給付の受給には一定額以下の年収である必要がありますが、収入が増加するにつれて収入と年金の合計額が緩やかに増加するよう、年金額が調整される仕組みになっています。
見直しを踏まえた備えが必要
 こうした配慮措置は設けられていますが、遺族厚生年金の見直しを踏まえ、将来の不安を減らすための備えが必要となります。「働き方の見直し」「家計の見直し」や「早めの資産形成」などに取り組むことが、将来のライフプランの安心につながります。
岡﨑 一恵(おかざき・かずえ)
社会保険労務士岡崎一恵事務所 代表
社会保険労務士
1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP®認定者

滋賀県大津市出身。同志社大学卒業後、地方銀行の人事部に勤務。
子育てのブランク9年と、紆余曲折の後、社会保険労務士として2018年開業。
2021年CFP®認定者として登録、2023年「くらしとお金のFP相談室」相談員、2024年日本FP協会FP広報センタースタッフを務める。
NPO法人障害年金支援ネットワークに所属。
地元横須賀の中小企業の労務管理と、障害年金代理請求業務、障害年金を受給されるご家庭のライフプラン相談に取り組む。

公式サイト https://www.okazakikazue.net/

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