推計値を置き去りにする少子化の速さ

森 義博
2026.08.03

出生数・出生率は10年連続ダウン
 厚生労働省から人口動態統計が発表されると、出生数や出生率が「〇年連続ダウン」と報道されることが恒例行事のようになっています。ちなみに昨年6月に発表された2024年の出生数と合計特殊出生率はともに2016年から9年連続ダウン。一方、死亡数は4年連続増加で、人口の自然増減数は2007年から18年連続減少という記録ずくめだったことを、昨年このコラムでもご紹介しました。

 そして、今年6月に発表された2025年はというと、出生数と合計特殊出生率は10年連続ダウン。死亡数は5年ぶりに微減だったものの、人口は19年連続自然減。減少幅は2年連続して90万人を超えています。(図表1)
図表1 近年の出生数・出生率・死亡数・人口自然増減数  ※赤文字は低下(死亡数は上昇)
出所)
厚生労働省「令和7(2025)年 人口動態統計月報年計(概数)の概況」をもとに作成
死亡数は出生数の2倍超
 ところで、図表1を見ると、死亡数は2020年と25年にそれぞれ微減して連続記録こそ途切れていますが、高齢化の進行により死亡数の増加傾向が続いていることは変わりません。

 時代を少し遡ってみましょう。現代に比べると多産多死だった戦前は、長らく死亡数が年間100万人を超えていました。戦後の1948年に100万人を切り、66年の67.0万人が記録のある中では最少です。ちなみに、この年は出生数が激減した「丙午(ひのえうま)」ですが、死亡数も最少だったのです。当時は乳児の死亡率が現代に比べるとまだ高かったので、出産控えによって死亡数も減ったわけです。

 その後、1980年代前半までは70万人前後で微増減を繰り返しますが、80年代半ば頃から増加傾向が定着します。90年に80万人、95年に90万人、2003年には100万人の大台に乗り、さらに2007年に110.8万人となって出生数を上回り、22年には出生数の2倍を記録したのです。
将来推計人口の推計値を置き去りにする少子化の速さ
 人口動態統計を伝える新聞報道などでは、国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口」(以下、「将来推計人口」)の推計と実態との比較がよく持ち出されます。将来推計人口は、今後50年間(さらに参考値として100年後まで)を推計するもので、公的年金の財政検証にも用いられる重要なデータです。5年ごとに国勢調査結果などをもとに作成され、通常は国勢調査の1年半後頃に発表されます(※)。
(※)
直近回だけは、コロナ禍の影響で国勢調査以外の必要なデータが揃うのが遅れたため、1年遅く2023年4月に発表されました。
 将来推計人口は出生数などを「高位」「中位」「低位」の3パターンで推計し、年金の財政検証などには「中位」が使われます。ところが、今回のように出生数の減少スピードが速すぎると、将来推計人口が発表される頃には、その年の推計値(中位)と実績値に既に乖離が生じている場合が:あるのです(図表2)。6月4日付の日経新聞もその点について「23年に公表した将来推計人口で、メインシナリオとされる中位推計で25年の出生率を1.25と見積もっていた。現実は悲観シナリオの低位推計が見込んだ1.10に近い。」と記しています。

 実績が早い段階から「低位」をトレースすることは過去にも起きており、年金財政などにとって重要な「中位」が実態を外すことがないよう、かなり慎重になったと聞いたことがあります。しかし、それでも乖離が生じてしまうほど昨今の少子化の動きは激しいと言えるでしょう。
図表2 出生数 ――「日本の将来推計人口」と実績との比較
出所)
国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)結果の概要」、厚生労働省「令和7(2025)年 人口動態統計月報年計(概数)の概況」をもとに作成
参考:
森 義博(もり・よしひろ)
公益財団法人ダイヤ高齢社会研究財団 シニアアドバイザー
CFP®、1級FP技能士、1級DCプランナー、ジェロントロジー・マイスター
1958年横浜市生まれ。大学卒業後、国内大手生命保険会社入社、2001年から同グループの研究所で少子高齢化問題、公的年金制度、確定拠出年金、仕事と介護の両立問題などを研究。2015年ダイヤ高齢社会研究財団に出向し研究を継続。2024年4月から現職。
趣味はピアノ演奏と国内旅行(とくにローカル鉄道)。

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