知っておきたい「障害年金」のポイント

岡﨑 一恵
2026.09.17

 前回(No.5089)は、病気やケガで仕事を休んだときに生活を支えてくれる「傷病手当金」についてお話ししました。傷病手当金の支給期間は通算1年6か月です。思うように働けない状態が長引けば、収入の減少が続くことも考えられます。今回は、病気やケガによる障害があるときに受給できる「障害年金」について解説します。
障害年金を受給するための3つの要件
 障害年金は、病気やケガによって日常生活や仕事などが制限されるようになった場合に、現役世代の方も含めて受け取ることができる公的年金です。手足の障害などの外部障害のほか、精神障害、心疾患やがんなどの内部障害も対象になります。
 障害年金を受給するには、「初診日」「保険料の納付」「障害の状態」に関する3つの要件を満たす必要があります。
①初診日に年金制度に加入していること
 障害の原因となった病気やケガについて、初めて医師等の診療を受けた日を「初診日」といいます。初診日に国民年金に加入していた場合は「障害基礎年金」、厚生年金に加入していた場合は「障害厚生年金」の対象となります。
 なお、20歳前、または日本国内に住んでいる60歳以上65歳未満の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は障害基礎年金の対象となります。
②保険料の納付要件を満たしていること
 原則として、初診日の前日において、初診日がある月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料を納付した期間と免除・猶予された期間が合わせて3分の2以上あることが必要です。また、初診日が2036(令和18)年3月31日までの場合、初診日に65歳未満で、初診日のある月の前々月までの直近1年間に未納付がなければ要件を満たすという特例があります。
 なお、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、納付要件は不要です。
③障害の状態が一定の基準に該当すること
 原則として、初診日から1年6か月を経過した日を「障害認定日」といい、この時点で障害の状態が定められた基準に該当していることが必要です。
 障害基礎年金には1級と2級、障害厚生年金には1級から3級があります。また、厚生年金に加入している間に初診日があり、3級より軽い一定の障害が残った場合には、障害手当金(一時金)の対象となることがあります。入院や在宅介護を必要とし、活動範囲がベッド周辺に限られるような方が1級、日常生活が困難で労働によって収入を得られないような方が2級、労働について制限のある方が3級に相当します。
 障害年金の全体像は以下の表のとおりです。
障害年金の請求方法
 障害年金の請求方法には次の2つがあります。
①障害認定日による請求
 障害認定日に法令で定める障害の状態にある場合、障害認定日の翌月分から年金を受け取ることができます。遡及して受けられる年金は、時効により5年分が限度です。
②事後重症による請求
 障害認定日に法令で定める障害の状態に該当しなかった場合でも、その後に病状が悪化し、法令で定める障害の状態になったときには「事後重症」による請求ができます。この場合、請求日の翌月分から年金を受け取ることができます。
 請求に必要となる書類は、医師が作成する「診断書」や、発病から初診までの経過、その後の受診状況や就労状況等について記入する「病歴・就労状況等申立書」などがあります。初診時の医療機関と診断書を作成する医療機関が異なる場合、初診日を証明するための「受診状況等証明書」なども必要です。
障害年金に対する誤解と不安とは?
 障害年金は生活保護とは異なる社会保障制度です。給料など他の収入があったとしても受給することができます。ただし、20歳前に初診日がある障害基礎年金の場合、本人の所得に応じた支給制限があります。
 また、障害年金と障害者手帳が混同・誤解されることもあるようですが、それぞれ根拠となる法令や認定基準、認定を行う機関が異なります。ですから、障害者手帳が交付されていなくても、受給要件を満たせば障害年金を受け取ることができます。なお、受給していることを周囲に知られる心配はありません。
正しく理解し、必要に応じて活用を
 障害年金を受給することで、安心して治療に専念できます。また、生活費の一部が保障されることで、治療を続けながら無理のないペースで働くこともできます。なお、障害年金の認定には更新の必要がない「永久認定」と一定期間ごとに更新が必要な「有期認定」があり、障害の状態が重くなった場合には年金額の改定を請求できることもあります。
 受給する権利がありながら、知識不足や誤解などから受給につながっていないケースもあります。正しく理解し、受給対象となる場合はためらわずに利用しましょう。
参考:
岡﨑 一恵(おかざき・かずえ)
社会保険労務士岡崎一恵事務所 代表
社会保険労務士
1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP®認定者

滋賀県大津市出身。同志社大学卒業後、地方銀行の人事部に勤務。
子育てのブランク9年と、紆余曲折の後、社会保険労務士として2018年開業。
2021年CFP®認定者として登録、2023年「くらしとお金のFP相談室」相談員、2024年日本FP協会FP広報センタースタッフを務める。
NPO法人障害年金支援ネットワークに所属。
地元横須賀の中小企業の労務管理と、障害年金代理請求業務、障害年金を受給されるご家庭のライフプラン相談に取り組む。

公式サイト https://www.okazakikazue.net/

▲ PAGE TOP